–「プロ経営者」という言葉を好まれるかどうかはともかく、デル、リヴァンプ、HOYAなど、複数の業種で社長を歴任された経歴は、世間的には「プロ経営者」の範疇です。経営のプロとして、会社を成長させる独自のフレームワークを持っていると思いますが、いかがでしょうか。
浜田 どの会社の場合も、最初から「戦略を決める」という偉そうなことではなく、まず社員と飲んで、食べて、話を聞いて、私という人間をわかってもらうことで、心理的な壁を低くしてもらいます。
その上で、その会社が悪化していたら、どういう手順で直そうか。好調なら、どのように成長を加速させようか。最初の3カ月は戦略などをつくらず、手探りで「この業界、この会社の本質的な課題とチャンスはなんだろうか」という点だけを徹底的に考え抜きます。
例えば、前職のHOYAではペンタックスのカメラ事業が厳しい状況でしたが、「本質はなんだろうか」と考えた時、それは「スマートフォン(スマホ)との戦いであること」、さらに「モノづくりを聖域化して、国内で高コストで製造していたこと」でした。
スマホとの戦いでコンパクトカメラが苦戦し、国内でのモノづくり神話にこだわることで、コスト競争力で負ける。この2つが課題であると認識して、工場を次々に閉じて海外に移管し、コンパクトカメラの自社製造を止めて、一眼レフカメラにフォーカスしました。社員にはだいぶつらい思いをさせてしまいましたが、その結果、業績は2年でV字回復しました。
「驚かない、ひるまない、怖がらない」
–アルヒに対しては、どのように切り込みましたか。
浜田 これまでは、FC展開による【フラット35】の販売で伸びてきましたが、消費増税や少子高齢化でやってくる“冬の時代”への備えがありませんでした。いわば、【フラット35】の一本足打法だったのです。
このままでは、やがて傾いてしまう。住宅ローンの先にも、いろいろなローンがあり、お客様に35年間寄り添えるはず。それに、不動産情報市場に出ていけば、もっとブランド力を高めることができます。
そこで、「戦略や計画の前に土台をつくろう」と、経営幹部を集めて合宿を2回開き、「MISSION 私たちの使命」「VISION 私たちのゴール」「VALUE 私たちが重んじるべき価値」を明文化しました。戦略や事業計画など、格好いいことを言う前に、土台を決めたのです。
私は、アルヒの前は、いろいろな会社の取締役や顧問、コンサルタントをしていましたが、どんな課題に対しても逃げずに挑戦しています。つらいことや痛いことを、怖れてはいけません。
幸い、私はいろいろな仕事をしてきたので、何にも動じなくなりました。パニックにならない、驚かない、落ち込まない、ひるまない、怖がらない。別に命を取られるわけではないので、何をやるにも平気です。もともとは、強い人間ではありませんでしたが。
–そうなんですか?
浜田 全然強くない! いろいろな苦労をしてきた結果、「なんでも来い」「怖れずに、突っ込んでいこう」と構えることができるようになったのです。そのため、普通のサラリーマン経営者であれば、怖くて手を着けられないようなことでも、平気で踏み出せるようになりました。