ホンダ社長は「タカタ支援は考えていない」と言明
自動車業界が注目しているのはホンダの対応である。ホンダは、タカタ製のエアバッグのリコールが累計で3000万台に達する見込みで、リコール台数は他社に比べ突出して多い。
車載用マイコン大手のルネサスエレクトロニクスの工場が東日本大震災で深刻な被害を受けた際にはトヨタ自動車などが共同出資して支援した前例はある。だが今回は自然災害ではなくタカタ固有の経営問題である。自動車メーカー各社はホンダにゲタを預けた格好になっている。
ホンダの八郷隆弘社長は2月24日の記者会見で「独自でタカタの経営支援は考えていない」と言明し、あらためて慎重な姿勢を示した。「単独ではやらない」という言い回しがポイントである。さらに八郷社長は「リコールした部品の交換比率の向上と真の原因究明を一生懸命やる」と話した。
タカタ製エアバッグに関連するリコールはホンダの業績を直撃した。15年4~12月期の連結営業利益(国際会計基準)は、前年同期比3%減の5672億円だった。4~9月期までは8%増を確保していたが10~12月期にはタカタ製エアバッグのリコール費用を大幅に積み増した結果、減益になった。リコール費用を含む品質関連費用は16年3月期に過去最大の3200億円に達する見通しだ。
ホンダは3200億円の内訳は明らかにしていないが、タカタ関連のリコール費用が2000億円を超えると見られている。ホンダは約半数の車にタカタ製のエアバッグを搭載しており、世界の自動車メーカーの中でリコール対象車が最も多いという事情がある。
ホンダの16年3月期の純利益は、前期比3%増の5250億円。タカタのエアバッグ問題がなければ最高益(これまでは14年3月期の6247億円)を更新できたかもしれない。
ホンダにとってタカタ問題は、喉に刺さった骨である。これ以上、泥沼に引きずり込まれたくないとの思いが強いはずだ。だから八郷社長は「単独でタカタ支援は考えていない」と予防線を張ったのだ。
大手自動車メーカーは厳しい判断を迫られることになる。会社更生法に追い込めば、「タカタを潰した真犯人」と名指し批判されるだろう。事業再生ADRを受け入れれば、「弱腰」などと株主から批判を浴びるだろう。米当局の反応も気になるところだ。どちらに転んでもタカタは悩ましい問題なのだ。
当然のことだが、タカタの株価は下がり続けている。2月12日に435円と上場来安値を更新した。昨年末から40%以上値を下げた。3月に入ってからは500円台で推移している。
タカタ製エアバッグ最大のユーザーであるホンダの八郷社長が支援に後ろ向きな発言をしたことから明るい材料は皆目見当たらず、株価反転の兆しはない。
(文=編集部)