リコール費用でタカタは債務超過に転落か
タカタの16年3月期連結決算(日本会計基準)の売上高は前期比12%増の7200億円、純利益は50億円の黒字(15年3月期は295億円の赤字)の見込み。当初は200億円の利益を想定していたが4分の1になる。米当局に制裁金を支払ったが、前期に計上したリコール費用の新たな計上を見送ったことで、見かけ上は最終黒字に転換する。
タカタがこれまでに対策費用として計上しているのは1000万台分だけ。5000万台以上のエアバッグの交換費用は、自動車メーカーが一時的に費用を立て替えている。調査結果を踏まえ、今後各メーカーからの請求が始まる。関連費用は5000億円を超えると推計され、1兆円を超すとの見方もある。米当局が追加のリコールを命じれば、費用はさらに増大する。米国では、複数の集団訴訟が提起されており、損害賠償は巨額なものになるだろう。
15年12月末時点のタカタの自己資本は1438億円。タカタ単独での支払いは困難だ。このままだと債務超過に転落することは避けられそうもない。リコールにかかった費用の負担割合に関する協議は、タカタの存続問題と切り離すことはできないだけに、やっかいだ。
自動車メーカーに債権放棄を迫るシナリオ
タカタは企業法務に詳しい弁護士らでつくる第三者委員会を設置し、事業再建に向けた計画を策定する。そこでは第三者委員会のお墨付を得て、自動車メーカー各社に債権の減免(借金の棒引き)を求めるウルトラC案が浮上している。裁判外紛争解決手続き(事業再生ADR)が有力だという。
タカタの株式の6割を創業家の高田一族が保有しており、高田重久会長兼社長は3代目だ。会社更生法を適用すれば経営陣は総退陣しなければならないが、事業再生ADRなら高田氏は続投できる。
第三者委員会は各社に対して、リコール費用負担の減免を求めるというタカタ側の意向を伝えたようだ。しかし、自動車メーカー各社がそんな虫のいい案をすんなりのむとは考えにくい。それを見越した次の手段が法的措置という見方だ。事業再生ADRか会社更生法か――。そのせめぎ合いが繰り広げられることになる。一方で、タカタはメーカーなので民事再生法はなじまない、との指摘も専門家から出ている。