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大ヒット「モンスト」生みの親、借金2ケタ億円でゲーム業界から消えていた過去とドン底人生

構成=大谷弦/清談社

家賃も光熱費も払えず、優秀な社員から辞めていく

–当時は、かなり苦しい台所事情だったんですか。

岡本 「もうダメだよね」という状態の中で、それでも営業をしていたら、バンダイナムコゲームス(現・バンダイナムコエンターテインメント)が拾ってくれました。バンナムは、ゲームをつくるお金は提供してくれたんですけど、それだけでは会社の借金を返済する余裕はありません。

 そのため、スタッフの給料は据え置き、あるいは減給にせざるを得ませんでした。できたばかりの会社なので若いスタッフが多かったのですが、伸び盛りの若い人たちの給料を抑える、というのは会社としてあり得ない。結果的に、優秀なスタッフから抜けていきました。

 優秀なスタッフが抜けた状態で仕事を受けているわけですから、結果も思わしくありません。まわりからは「お前ら、これ、どうにもならんやろ」と言われるのですが、「そうですね」としか答えられない。

 その頃、バンナムでもリストラが始まったりしてお金がなくなってきて、最終的にはバンナムがうちの社員の給料を直接払うというシステムになりました。当時は「事務所の家賃も払えないです」と言っても、「(払わなくても)6カ月ぐらいは追い出されないから大丈夫だ」と言われるような状況でした。

–かなり壮絶ですね。

岡本 「とりあえず給料だけは払うから、モノを完成させてくれ」となるのですが、経費も光熱費も家賃も未払いの状態でしたから、もう沈むしかないんですよ。僕はとにかく借金をしてでもゲームソフトを完成させることしか考えていなかったですね。

–05年には、Xbox 360(マイクロソフト)専用のパーティーゲーム「エブリパーティ」という、ある意味で伝説的なセールスの作品を開発しました。

岡本 正直、あのゲームは僕がつくったといわれるのは不本意ですね(笑)。あのゲームはもともと、ハドソンとマイクロソフトがつくっていたのですが、企画と絵の出来が悪かったので、最後にうちが開発の手伝いをしただけなんです。

 それで、マイクロソフトに「デザイナーのギャラをください」と言ったのですが、「ハドソンに払っています」と言われて、ハドソンからは「描き直し分は別の予算だから知らない」となりました。

 結局「三者、痛み分けで」ということになり、3社が3分の1ずつ負担することになりました。「ちょっと待って。俺のところは何も悪くないのに、なんで泣かなあかんねん」と。最終的には、僕の名前でゲームが出て、世間的には「(売れなかったのは)岡本吉起がダメだったから」ということになっていますね(笑)。

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