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大ヒット「モンスト」生みの親、借金2ケタ億円でゲーム業界から消えていた過去とドン底人生

構成=大谷弦/清談社

給料が払えず、社員から罵声を浴びせられる日々

–いろいろと“ババ”を引かされていますね。

岡本 僕は、相当引いていると思いますよ(笑)。でも、自分で会社を経営している時にババを引かされるのは、仕方ないですよね。会社を立ち上げてからは、そんなことの連続でしたが、それは僕の経営が甘いから。もともと、僕は経営ではなく開発畑の人間だし、ある意味でハメやすかったのかもしれませんね。

–会社の末期は、どういう状態だったのですか?

岡本 僕は、ずっと給料がゼロでした。でも、社員は最大320人いたので、僕1人がゼロにしたところで、あまり意味がないんですよ。だから、せめてゲームを完成させたかった。

 この業界は、未完成なモノに携わっていても何もプラスにはなりません。どんなにダメな作品でも、世に出ていれば、グラフィッカーなら「僕は、この絵をやりました」と言えるじゃないですか。それが、再就職につながるかもしれません。

 そんな思いで、個人で借金を背負いながら、沈む船の上でもがいているような状況だったのですが、給料の遅配や未払いが発生すると、スタッフからはものすごい罵声を浴びせられました。

 自分が守ろうとしているものから攻撃を食らうというのはダメージが大きくて、うつ病になってしまいました。2ケタ億円という借金を抱え、「起死回生のチャンスなんて、もう一生ないんだろうな」と思いながら、沈んでいったのです。

–まさに、ドン底というやつですね。

 ゲーム業界の荒波に揉まれ、心身ともに落ちるところまで落ちていた岡本氏。しかし、そんな状況で「モンスト」のヒントをつかみ、再び立ち上がることになる。奇跡の復活ストーリーは、後編でお伝えしたい。
(構成=大谷弦/清談社)

【岡本吉起プロフィール】
1961年生まれ。81年にコナミに入社。83年には創業間もないカプコンに移り、数々のヒットゲームを世に送り出す。96年にはカプコンの取締役開発本部長、01年には専務取締役に就任。03年にカプコンを退社し、ゲームリパブリックを設立。自らのスタジオで大作ゲームの製作に着手する。しかし、10年頃から経営難になり、11年には実質的に活動を停止。13年にリリースされた「モンスターストライク」の開発に携わる。

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