ニッチな市場において圧倒的なブランド
では、レディMとはどんな会社なのだろうか。そしてなぜハーバードのケースに取り上げられたのだろうか。以下は、筆者が同社のホームページなどから調べた内容だ。
もともとレディMは南麻布の洋菓子店オーナーが2002年に米国に設立し、当初はニューヨークの高級レストランや高級ホテルなどの法人向けにケーキの販売を行っていた。その後、04年にハーバード・ビジネススクールのGMP(エクゼクティブ向けコース)出身の日系人Ken Romaniszyn社長が同社のオーナー兼経営者となった。同氏はもともと両親がハワイで日本食レストランを経営しており日本にもたびたび来日していたことから、日本食の良さを理解していた。家族がもともとの日本人創業者とも懇意だったことから、同社のオーナーとなった。
その後、米国1号店をマンハッタンの高級住宅街として有名なアッパーイーストサイドに04年にオープンし、たちまち話題となったが、企業として急成長をするのは2号店を12年にニューヨークのザ・プラザ・フードホールにオープンしてからだ。きっかけは先述のとおりセレブリティが絶賛したことだ。
そしてニューヨークでも次々と出店を行い、西海岸、さらには東南アジアへも進出することで急成長を遂げている。年間売上はすでに10億円を超え、利益率も10%を超えている模様だ。
当然競合もミルクレープを発売して対抗しようとしているが、同社を脅かす存在にはなっていない。一日に7000個ものミルクレープを量産する体制ができている同社は、明らかにニッチな市場において圧倒的なブランドを構築しているからだ。
業容拡大時の意思決定プロセス
レディMがハーバードのケースに採用されたひとつの理由は、マネジメントがプロフェッショナルに変わることによって、街のケーキ屋さんが多店舗展開する企業へと成長していく過程において直面する問題を学ぶことができる事例だからだろう。
ちなみにレディMはベンチャー企業のファイナンス科目のケースとして紹介されている。ハーバードのケーススタディでは、企業の歴史や経営者の人となりなどを紹介するとともに、財務データ(貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書のいわゆる財務3表)が与えられる。そして、学生は事前にケースを読み込み、授業では経営者の立場にたって「あなたなら課題に対してどう考えるか?」という問いかけを教員が学生に投げかける流れだ。