港区の小さなケーキ屋さん、なぜ全米進出&大ブームの人気店に?ハーバード教材に採用
筆者は米国で生まれカナダで幼少期を過ごした帰国子女だが、ケーキといえば砂糖の塊というくらい甘いものという認識だったので、確かに日本の繊細で甘すぎない美しいケーキは驚きだった。さらにコーヒーもアメリカンコーヒーは薄く香りもあまりしないが、そうしたコーヒーを飲み慣れたアメリカ人がイタリアの薫り高き濃厚なエスプレッソを起源とするスターバックスの熱狂的なファンになったのも納得がいく。アメリカ人もおいしいものが好きなのだ。
しかし、日本にずっと生まれ育った場合には日頃当たり前に思っているモノやサービスのすばらしさに気が付かない。いや、気が付いていても慣れてしまっているのではないだろうか。レディMのケースでも、日系ハワイ出身の経営者がアメリカの味覚も日本の味覚も両方理解していたからこそ、ミルクレープというニッチなマーケットで高単価の商品を多店舗展開できたといえるだろう。
日本人は世界で最もサービスの質に高い要求をする国民だといわれている。筆者もその通りだと思う。また、味覚や色彩についても世界に類をみないほどの繊細さがある。クールジャパンというとアニメや漫画、ゲームなどが取り上げられるが、クールかどうかを判断するのは海外の人だということを肝に銘じなければならないだろう。
日本企業、とりわけ小さな企業が国際展開を行う際に大切なことは、進出先の国と日本と両方をよく理解している人材の採用・育成と、マネジメントやビジネスに関する基本的な教育ではないかと強く感じる。
(文=平野敦士カール/ビジネス・ブレークスルー大学教授(学長大前研一)、ネットストラテジー代表取締役社長)