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タイミー、闇バイト募集に「通報ボタンで知らせて」「業務終了して」→疑問続出

文=Business Journal編集部、協力=京師美佳/防犯アドバイザー
タイミー、闇バイト募集に「通報ボタンで知らせて」「業務終了して」→疑問続出の画像1
タイミー公式サイトより

 スキマバイトのアプリ「タイミー」に闇バイトの募集とみられる求人内容が掲載されている問題を受け、タイミーは8日、公式X(旧Twitter)アカウント上に、「ワーカーのみなさまも怪しいと感じた求人内容があったら通報ボタンでお知らせしてください」と注意喚起を促すコメントをポスト。同社の小川嶺CEOも同日、X上で「タイミーでは、求人掲載する事業者のチェックと、求人内容を勤務日までに全件チェックする体制を構築しており、怪しい求人は掲載を止める措置を講じています」と説明した。だが、求人掲載に対するチェックの体制・プロセスに疑問の声も相次いでいる。タイミー上での求人掲載プロセスやチェック体制は適切といえるのか。また、スポットワークの仲介アプリが闇バイトによる犯罪を助長してしまう可能性は考えられるのか。専門家の見解を交えて追ってみたい。

 働きたい人がアプリを使って瞬時に仕事を確保できるスキマバイトアプリの利用者が増えている。市場のパイオニアであるタイミーの累計登録者数は約900万人、求人の事業所数は約29万7000拠点に上る。日時・時間を指定して数時間だけの単発のアルバイトを見つけられ、一般的なアルバイト募集で必要な履歴書の提出や面接などが不要で、早ければ当日に働くことが可能。さらに即日に報酬を受け取ることができる。

 一方、求人を出す企業側のメリットとしては、求人の掲載料金が無料である点だ。一般的に求人サイトの掲載料は1件あたり約10~15万円ほどといわれており、採用に至らなかったとしてもコストが発生するが、タイミーは採用が成立した場合のみ、企業はワーカーに支払う報酬の30%を手数料としてタイミーに支払うかたちとなる。また、タイミーはサービスを利用して働いたワーカーを事業者が正社員として雇用することを許しており、正社員登用をサポートするサービス(「タイミーキャリアプラス」)も提供している。

スキマバイトアプリや求人サイトで募集増加

 そんなワーカー、事業者側の双方が手軽に利用できる点を逆手に取るかのような事態が起きている。社会問題化しつつある闇バイトの募集とみられる求人が、しばしば掲載されているのだ。たとえば、携帯ショップの契約ノルマ達成のために携帯ショップに行って契約をするという内容の募集では、契約にかかわる初期費用や月々の通信費は募集をかけている事業者が負担するとなっている。また、「夜道で猫を探すバイト」は勤務時間が午前1時30分~4時30分で報酬は7500円となっており、「指定された道を通り、猫がいたところを地図上で印をつけるだけです」「情報漏洩防止の為、携帯電話や荷物を預かります」と記載されている。

 防犯アドバイザーの京師美佳氏はいう。

「一つ目の携帯ショップの契約バイトは名義貸しの可能性が高く、違法性があると思われます。2つ目の深夜に猫を探すバイトは、報酬はそれほど高額ではないですが、『指示通りの道を通る』『携帯電話や荷物を預かる』という点が怪しく、闇バイトの可能性があります」

 スキマバイトアプリに闇バイトの募集が掲載されるケースは増加しているのか。

「スキマバイトアプリに限らず、大手の求人サイトなどでも増えています。運送、シール貼り、コールセンターの求人に見せかけるケースもみられます。これまで犯罪グループはSNS上で『受け子』『たたき』といった隠語を使って募集していましたが、取り締まりが強まっているのに加え、従来の手法だけでは必要な人数を確保できなくなっていることもあり、スキマバイトアプリや求人サイト上で闇バイトであることを隠して利用者を“騙して”人を確保しようという流れが起きています。

 一方、スキマバイトのアプリの利用者は自分の都合の良い時間だけ日雇いでできる仕事を探すため、仕事の選別に慎重になりにくいという傾向があります。募集する犯罪グループが、そうした利用者側の心理的な隙をうまく利用しているという面もあるでしょう。今回、タイミーが注意喚起を行ったということは、それだけ闇バイトの募集やそれに関する問い合わせが増えているからだとも考えられます」(京師氏)

 タイミー上に違法性のある求人の募集が掲載されることはあるのか。また、そうしたアルバイト募集の取り締まり・監視について、どのような対策を行っているのか。Business Journal編集部は2度にわたりタイミーのサイト上の報道関係者様向けのお問合せフォームより問い合わせたが、期日までに回答を得られなかった。

事業者と求人内容をチェック

 タイミーは8日、前述のとおり公式Xアカウント上で注意喚起の通知を行い、次のように綴っている。

「タイミーでは、求人を掲載する事業者のチェックと、求人内容のチェックを中心に闇バイト対策を徹底しています。求人内容は、勤務日までに全件チェックする体制を構築しており、怪しい求人は掲載を止める措置を講じています。タイミーのアプリ内には『通報ボタン』もあります。ワーカーのみなさまも怪しいと感じた求人内容があったら通報ボタンでお知らせしてください。もしも、募集の内容は通常だったけど、現場で違和感を感じたらすぐに勤務を終了し、通報ボタンでお知らせください。タイミーラボの記事も参考にしてください」

 その「タイミーラボ」の記事には次のように書かれている。

「勤務先で『これは闇バイトでは?』と不審を感じたら、すぐに勤務を終了するようにしてください」

「断ることができず勤務をしてしまったら、終了後速やかにお近くの警察署や関連機関に連絡するようにしましょう」

 だが、これに対して一部SNS上では次のように疑問の声もあがっている。

<掲載前にチェックを完了しておくべきではないでしょうか>

<勤務日までにチェックするって甘い>

<事業者のチェックが素通りされてる>

<掲載までのステップを見直した方が良いのでは>

<事業者向けアカウント登録すごく簡単でした>

<スマホを取り上げられたら通報できない>

<ワーカーに丸投げ>

<闇バイトなんかを一瞬でも載せるのが問題>

<対応がガバガバ過ぎる>

 スキマバイトアプリが闇バイトによる犯罪を助長してしまう懸念はないのか。

「どれだけアプリ運営企業側が対策をしても、犯罪グループ側は審査の際に書類を偽造したり、あの手この手を使って監視の目をすり抜けようとしてくるので、100%防ぐことは困難です。ですので、利用するワーカー側が『闇バイトの募集が混じっている可能性がある』ということを頭に置いて、注意しながら仕事を選ぶことが重要となってきます」(京師氏)

 では、闇バイトに手を染めてしまわないためには、どうすればよいのか。

「不自然に報酬が高かったり、『ホワイトなお仕事』といった文言がみられる場合は警戒すべきですが、最近では隠語を使わない募集も増えており、闇バイトの募集とはわかりにくくなっています。応募するとすぐに運転免許証などの身分証明書の提出を求めてきたり、シグナルやテレグラムといった秘匿性の高いメッセージアプリを使ってのやりとりを求めてきたら、すぐに逃げてアプリ運営元に通報すべきです。また、強盗や詐欺だと知らないまま応募していたとしても、例えば犯行現場まで実行犯を乗せた車両を運転してしまうと共同正犯になってしまう恐れがあるため、怪しいと感じた時点ですぐに引き返すことが重要です。

 警察庁も、もし犯罪グループに個人情報を渡してしまい、それを使って脅迫を受けた場合は警察に相談してくれれば保護すると呼びかけており、すぐに警察に相談すべきです」(京師氏)

拡大するスポットワーク市場

 スポットワーク市場ではタイミーに続くかたちで、メルカリの「メルカリ ハロ」やLINEヤフーの「LINEスキマニ」、パーソルホールディングス傘下の「シェアフル」など新規参入組も含めて競合する大手企業が力を入れ、市場が拡大している。

 一方、闇バイトを使った強盗事件の続出は社会問題化しつつある。昨年に広域強盗事件の指示役だった特殊詐欺グループの幹部が逮捕された「ルフィ事件」では、闇バイトが広く使われていた。犯罪グループの指示役、リクルーターがSNSなどで強盗の実行犯や詐欺の受け子などを募集して犯罪に加担させるもので、高額な報酬や即日払い、「ホワイトな高額バイト」などを謳っているのが特徴。応募すると個人情報の提出や匿名性の高いメッセージアプリを使ったやりとりを求められることも多い。個人情報を握られるため、闇バイトだと気が付いて辞退すると、危害を与えると脅迫されることもある。

 10月に横浜市の住宅で住人の遺体が見つかり現金が奪われた強盗事件では、逮捕された宝田真月容疑者は「途中で犯罪に加担することに気付いたが、家族に危害が加えられるかもしれないと考え断れなかった」と話しているという。同月に所沢市の住宅で発生した強盗傷害事件では、闇バイトで集められた実行犯たちは当日に現場に到着するまで強盗を行うということを知らされていなかったという。

 首都圏で闇バイトを実行犯とする強盗事件が相次いでることを受け、10月、1都3県の警察本部は合同捜査本部を設置するなど犯人の逮捕に力を入れているが、現時点で逮捕されているのは実行犯と彼らを勧誘したリクルーターにとどまっており、上位の指示役の逮捕には至っていない。10月29日放送の報道番組『羽鳥慎一 モーニングショー』(テレビ朝日系)が取材したある闇バイトのリクルーターは東南アジアに住んでおり、ひと月あたりの収入は400万~500万円ほどだという。闇バイトに応募してくるのは、ギャンブルなどで闇金や消費者金融などに借金を抱えている若者が多いという。

 警察庁は、闇バイトに応募したことがきっかけで本人や家族に危害を加えるなどと脅迫された際には保護する方針を示しており、応募後であっても警察に相談するよう呼び掛けている。

(文=Business Journal編集部、協力=京師美佳/防犯アドバイザー)

京師美佳/防犯アドバイザー:取材協力

京師美佳/防犯アドバイザー:取材協力

トータル防犯アドバイザーを目指し、セキュリティ企業へ就職。法人営業部の責任者を務める中で、防犯設備士の資格を取得。その後、防犯ガラスメーカーで、セキュリティ事業部長や防犯アドバイザーとして活躍。2005年に独立して、京師美佳セキュア・アーキテクト設立。現在は講演やテレビへの出演。雑誌や新聞への寄稿など多方面で活躍中。

Twitter:@kyoshimika

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