――経営者としてどんなところに力を入れているのですか?
松田氏 それは、技術なんですね。鋼材の加工というのは、いってみれば匠の技術なのですが、匠の技術だからこそ他社では再現しにくいという側面があります。
――そうすると、現場作業者の養成、そして確保が重要となるわけですね。
松田氏 私どもが考えているのは「鉄を通して、社員の成長とお客様の繁栄を実現したい」ということですが、具体的には「折り曲げ」と「ロール」という加工を、当社の強みとして追及しています。
――社員数が倍になったということで、昨年から大きな動きがあったわけですね。
松田氏 2つの工場でキャパシティがきつくなっていました。数年前から第3工場をと考えていたのですが、ある会社が営業をやめるというのを業界紙で目にしました。思い切って交渉にうかがいましたら、昨年早々に現在の第3工場を譲渡していただいたのです。
――規模はどれくらいでしょうか。
松田氏 第3工場は約2400坪ありますので、第1、第2より大きい工場になります。
――昨年は、もうひとつ大きな動きがありましたね。
松田氏 同業の東工建(あずまこうけん)を事業承継しました。経営者が高齢となり、後継者もいないということで、取引先でもありましたので経営を引き継がせてもらいました。
――どんなシナジー(相乗)効果を見通したのですか。
松田氏 東工建も当社と同じく、各種形鋼のロール曲げ技術に定評と実績があるので、当社が目指すところと同じだと判断しました。工場と本社も同じ鉄鋼団地の中にあり、行き来など何かとやりやすい。
社員を大事にして次のステージへ
――社長が社員の人たちに呼びかけているのは、どのようなことでしょうか。
松田氏 大層に聞こえるかもしれませんが、「東日本NO.1の鋼板加工会社になる」ということを呼びかけています。特に、鉄板の「折り曲げ」と「ロール」という技術分野にこだわっていこうと言っています。
――失礼ながら、結構具体的で明確に進んでいらっしゃるのですね。
松田氏 何とかそうしよう、と(笑い)。でも、それを実現してくれるのはお客様と社員たちです。当社のお客様は、取引の歴史も長く、“松田商工の技術力”を信頼してご依頼いただいております。高いご期待に応えていく、やりがいを実感できます。
――現場で拝見したのですが、たとえば鉄板を幅広側の径が1メートル以上もある大きな漏斗状に加工するなどしていました。
松田 はい。手作業加工で、一発勝負で仕上げます。