――本当に匠のわざですね。社員の皆さんもイキイキとされているようにみえます。
松田氏 大卒の新卒採用を5年前から始めました。おかげさまで退職者はゼロです。社員には、安定した生活を送りながら充実した仕事をしてほしい、と願っています。東工建も入れれば、4工場となったので着実に130名体制を実現したい。
――中途採用も進めていくということですか。
松田氏 はい。現場のほうも経験者は大歓迎します。当社で何より匠の技術を向上してもらえれば、それに越したことはありません。
中小企業の生き残り戦略とは
松田社長にインタビューして感じたことは、数十名規模の会社が堅実に伸びていくには、やはりその規模に適した戦略がある、ということだ。ポイントを集約すると、次のようなことになる。
1.社員を大事にする。会社は社長ひとりでは回せない、育てられない。
2.小さいなりに特色を出す。戦略的には差別化点をつくれ、ということだ。
3.経営者が経営に絶対的に集中すること。それを見て社員も奮起する。
松田商工を取材してもうひとつ感じたのは、同族企業における経営陣の確保ということだ。東工建もまた第3工場を保有していた会社も、後継経営者の確保が問題となり、松田商工に後を託した。
対照的に松田商工は、1代目から3代目までの社長が同族内で順調に承継されてきた。さらに現経営陣を見ると、副社長が社長の実弟、取締役が社長の義理の弟で年代的にそんなに離れていないということもあり「松田3兄弟」による経営が具現化されている。そして拝見したところ、とてもチームワークがよさそうだ。
これは、日本で99%以上を占める同族企業にとってはうらやましい状況のはずだ。着実な体制で固めている同社の未来は、明るいのではないか。
(文=山田修/ビジネス評論家、経営コンサルタント)
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