欠陥エアバッグ問題で窮地に立たされているタカタが、債務超過の危機に瀕している。
米高速道路交通安全局(NHTSA)は5月4日、タカタ製エアバッグを最大で4000万個、リコール(回収・無償修理)の対象に追加すると発表した。日本や欧州の規制当局はNHTSAの方針に追随すると考えられるため、リコールの対象は全世界で1億個を優に超える。国土交通省は国内で700万個の追加のリコールを指示した。
リコールにかかる費用は1個当たり1万円が目安とされており、1億個で1兆円規模になる。3月末には「リコール費用が2兆円を超える」というタカタ社内での試算が外部に流出して話題になった。
タカタの2016年3月末時点の自己資本は1245億円にすぎず、手元資金は15年12月末時点で656億円にとどまる。16年3月期にリコール関連の特別損失を160億円計上し、17年同期は140億円を計上するとしたが、これでは焼け石に水である。仮にリコール費用の2割をタカタ側が負担するとしても債務超過は避けられない。
大手自動車メーカーの対応も難しくなっている。マツダは4月27日に16年3月期連結決算を発表したが、タカタ製エアバッグのリコール対策費用として407億円を特別損失として計上した。
タカタとの取引が多く、タカタの第7位の大株主(1.2%、100万株を保有)でもある本田技研工業(ホンダ)は、近く16年3月決算を発表する。どこまでリコールの経費をタカタに負担させるかが焦点となる。
ホンダは世界で2000万個超のエアバッグ部品の追加リコールを行う。これまでのリコール対象を含めると、累計5000万個を超える見通し。ホンダは1社だけで全体のおよそ半分を占めることになる。ホンダは新たに発生するリコール費用が2000億円規模になるとみている。
日本の自動車メーカーは、円高、新興国の経済悪化による新車の売れ行き不振、熊本地震による部品供給のストップという三重苦にあるが、さらにタカタ危機が加わり、今や四重苦の状態だ。
米国の証券会社の試算によると、国内外の自動車メーカーが2月末までに引き当てたリコール費用の総額は6000億円強。今回、NHTSAが示した基準によって日欧メーカーが追加リコールを実施した場合、総額でリコール経費が1兆円を上回るという見通しは、決して荒唐無稽なものではない。
タカタの第三者委員会はどう出る
タカタの基本方針は、自動車各社に支払いの軽減を求めることだ。巨額なリコール費用の負担に耐えられないからである。エアバッグのリコール費用は、現時点では自動車メーカーが一時的に立て替えているが、各社は費用の大部分をタカタに請求する方針としている。