リコールにかかった費用の負担割合に関する協議は、タカタの存続問題と切り離すことができないだけに、やっかいだ。
タカタは、企業法務に詳しい弁護士らでつくる第三者委員会「外部専門家委員会」を2月に設置した。タカタの再建に向けた計画を策定するが、裁判外紛争解決手続き(事業再生ADR)が有力な手法として浮上している。高田会長兼社長は8月をメドに退任し、経営陣を刷新。第三者委員会は新たなスポンサー企業を決めたいとしてきたが、5月11日に記者会見した野村洋一郎最高財務責任者(CFO)は、第三者委員会が策定中の再建案は「9~10月に経営陣に提出される」との見通しを明らかにした。秋まで高田会長兼社長は留任する可能性が高い。
第三者委員会は、自動車メーカー各社に対してリコール費用の負担の減免を求めている。しかし、各社が減免を簡単に受け入れるとは考えにくい。それを見越した次の手段として浮上しているのが、法的措置ということになる。「事業再生ADRと会社更生法のせめぎ合いになる」と予測する法曹関係者もいる。
株価は上場来安値を更新
タカタの16年3月期の連結最終損益は、130億円の赤字(前の期は295億円の赤字)となった。昨年11月時点では50億円の黒字を見込んでいたが、2期連続の赤字に陥った。ちなみに、この決算では追加リコールという緊急事態はまったく考慮されていない。
当然のことだが、株価は下がり続けている。4月8日に332円の上場来安値を更新し、昨年12月の高値977円から7割近く下落した。さらに5月6日には前営業日(5月2日)比57円安の316円まで売られ、5月10日には310円と下値を切り下げた。いまや株価が浮上する材料は皆無だ。
タカタ製エアバッグ最大のユーザーであるホンダの八郷隆弘社長が支援に後向きの発言をしており、NHTSAの追加リコールの方針がトドメを刺した格好だ。
損保大手がタカタの取引信用保険の取り扱いを拒否
タカタへの納入業者が4月に入り、東京海上日動火災保険に「取引信用保険」を申し込んだが拒否されたとの情報が流れている。
取引信用保険は、企業間取引で納入先が倒産した際に売掛金を保証するもの。保険料は対象企業の信用力によって決まる。経営状態が悪化すれば保険料は高くなる。保険の引き受けを拒否されたということは、タカタの信用力が失墜したという証拠である。
これまでも、シャープや第一中央汽船を対象とした取引信用保険が損保から取り扱いを拒否されている。その後、シャープは台湾企業に身売りし、第一中央汽船は15年9月末に東京地裁に民事再生法の適用を申請、経営破綻している。タカタの窮状は各方面であらわになっている。
(文=編集部)