経営責任を明確にしないスズキ
国交省はスズキ車の燃費を計測し直すという。再計測は、データ偽装のあった三菱自動車に続いて2社目となる。
「経営責任や社内処分をどうするのか」と問われると、鈴木会長は「まず経営改善が第一で、現時点でのコメントは控える。(担当した社員らも)悪意で手を抜いたなら問題だが、善意だったとすれば人情的に考えないといけない」と答えた。
鈴木氏は自動車業界において、「卓越した経営者」と評価する声も多かったが、「善意」で不正行為をする社員がいるという認識が時代錯誤である。不正をすることが、たとえ経営陣や社員が「会社のためだ」と思い込もうとしていたとしても、それは正しい行為ではない。
鈴木会長の会見に同席したのは本田治副社長ら3人。鈴木氏の息子である鈴木俊宏社長が批判の矢面に立たないように配慮した。スズキは実質的に鈴木氏が会長兼社長だということを、この会見ではからずも対外的に示したわけだ。可愛い子には旅をさせろという諺があるが、鈴木氏は相変わらず過保護なのである。
鈴木氏を「カリスマ経営者」と評する人がいるが、「燃費性能はほぼ間違いない。(ユーザーに)迷惑をかけていない」と強弁するのは実に見苦しかった。「どの車種も実際の燃費値との差は5%以下で問題はない。数字がすべて物語っている」(本田副社長)となると、なんのための記者会見だったのか。
「迷惑をかけていない」と突き放されたスズキのユーザーは、次はスズキのクルマは買わないとなるだろう。
「数字がすべて物語っている」という、副社長の傲慢不遜な不規則発言を、どうして記者会見に出ていた記者たちは追及しないのだろうか。
スズキは対象車種の販売を続けており、テレビのCMも続行中だ。国交省はスズキに、追加データなどを5月31日までに報告するよう指示しており、実態の解明はまだ先なのに営業先行である。
自動車業界全体の信頼が揺らいだ
5月18日の東京株式市場で午後、スズキ株は急落。年初来の安値を更新して、一時、433円安の2450円まで売られた。終値は270円安の2613円。19日には反発して始まり、終値は92.5円高の2705.5円。しかし、18日の始値2860円より154.5円も安い。20日は一時、2626円まで下げ終値は2724.5円。鈴木修会長の言い分を株式市場が全面的に支持しているわけではない。