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山本康博「なぜあの商品はヒットしたのか/しないのか」

ディズニーR、深刻な客離れとブランド毀損の非常事態…4年連続値上がりが失敗か

文=山本康博/ビジネス・バリュー・クリエイションズ代表取締役

競合USJの動きを意識しての便乗値上げなのか

 大阪のユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)は、一種の“カオス的なやり方”で良い方向の大胆な戦略を打ち出し成功している。今年15周年を記念してリボーン(生まれ変わり)戦略を打ち出し、映画の世界にとらわれず、顧客の喜ぶ世界を取り入れているからだ。その結果、入場者数は前年同期比約18%増と絶好調だ。TDL1,300万人に対して今年は1,500万人を目指しているという。

 昨年話題になった『ハリー・ポッター』エリアやマンガ『進撃の巨人』『エヴァンゲリオン』をテーマに取り入れた期間限定アトラクションを開催し、吊り下げ型のコースター「ザ・フライング・ダイナソー」を新設して魅力を高めた。さらに、重要なターゲットであるファミリー層を取り込むために、「世界イチの親子になろう!」というキャッチコピーで「ユニバーサル・ワンダーランド」にてスヌーピーやセサミストリートを起用したアトラクションを充実させるなど、目下快進撃中である。

 TDRは15年の入場者数を3,040 万人と強気な予測をしていたが、結果それさえもクリアできなかった。公式発表によると7月~12月の入場者数が減少している。しかし、比較的に裕福で開業時に訪れたことのある子持ち世帯40歳以上の入場者の割合は20%と増えているため500円くらい値上げしても大丈夫と考えているのか、もしくはUSJはすでに7,400円に値上げしているから同じ価格に設定にしようなどと思っているのかもしれない。

 TDRの運営会社オリエンタルランドの15年10~12月の報告書は、次の通り23億円の売上増になっているとしている。

「テーマパーク入園者数が前年同期を下回ったものの、ゲスト1人当たり売上高がチケット価格改定に伴い増加したことなどにより、当第3四半期連結累計期間の業績は、売上高354,452百万円(前年同期比0.7%増)」

開業から33年という歴史年月が、顧客に古さを感じさせているのか

 TDLは1983年開業だが、USJは01年開業とまだ15年と新しい。オリエンタルランドの有価証券報告書には以下のように記載されている。

「ゲストの皆様に十分満足していただくために必要な要員や資金を投入し、高いレベルのサービスを提供し続けること、そのための従業員教育に投資を惜しまないこと、安全や清潔さ、魅力的なデザインなど施設のクオリティを決して落とさないこと、そして、新たなアトラクションを適時に導入することをはじめとして継続的かつ資産効率を加味した設備投資を行っていくことが必要不可欠であると考え、これらの施策を実行してまいります」

山本康博

山本康博

ビジネス・バリュー・クリエイションズ
代表取締役、損保ジャパン顧問。ブランドマーケッター。日本コカ・コーラ、日本たばこ産業、伊藤園でマーケティング、新商品企画・開発に携わり、独立後に同社を設立。これまで携わった開発商品は120アイテム、テレビCMは52本制作。1年以上継続した商品は計算すると3割以上、メーカー側でマーケティング実績35年。現在では新商品開発サポートのほか、業界紙をはじめとしたメディア出演や寄稿、企業研修、大学等でのセミナー・講義なども多数実施。たたき上げ新商品・新サービス企画立ち上げスペシャリスト。潜在ニーズ研究家。著書に『ヒットの正体』(日本実業出版社)、『現代 宣伝・広告の実務』(宣伝会議)、2016年スタンフォード大学 David Bradford 名誉教授、ボストンカレッジ Allan Cohen 教授の推薦書として、世界に向けて英著、 “Stick Out”a ninja in Japanese brand marketingを全世界同時発売開始。『Stick Out~a ninja marketer』(BVC)、現在ブレイク中で話題のAmazon書籍総合1位も獲得したベストセラー『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』(致知出版)の一人として8月1日執筆など。

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