問題の悪質性が明らかになるとともに、スズキの態度も変化してきた。5月31日の記者会見で鈴木会長は「はっきり言って甘さがあった。よく調べていなかった」と反省。社内処分についても「これだけの不正なので(人情的に考えるといった)前言は撤回して、法に従って責任者を処分するしかないと今は考えている」と述べた。
三菱自と共通する企業体質
そもそもスズキが燃費データの不正を公表する約1週間前の5月10日の決算発表会見で、鈴木会長は国土交通省から指示されている燃費測定方法の調査について「現時点で調査は順調に進んでいる」と述べ、不正はないことを強調していた。この時点で本当に鈴木会長が不正を知らなかったとしたら、悪い情報が上に伝わりにくい社内体質は三菱自と共通するところがある。
スズキでは、不正な方法で燃費データを測定していた14車種のうち、「もっとも条件が厳しい」燃費最良車について、正規の惰行法で測定した走行抵抗データで燃費を測定した結果、不正な方法で取得したカタログ表記の燃費値を上回っていることを社内試験で確認。「お客さまに迷惑がかからない」(鈴木俊宏社長)を理由に現行生産モデルの生産・販売は継続する方針。
ただ、燃費データの取得で不正を行っていたことによる企業イメージ悪化の影響は広がっている。スズキの5月の軽自動車販売は前年同月比15.4%減と大幅に落ち込んだ。特に一般消費者がほとんどの軽乗用車の販売は前年同月比21.1%減と不振だった。鈴木会長は「昨年10月以降、お行儀の悪いことをしなくなり、11月からゼロになった」と述べ、自社登録と呼ばれる販売店が自社で軽自動車を購入してシェアを伸ばす販売手法を取り止めた影響によるマイナスが大半との見方を示す。
しかし、軽自動車のユーザーは女性の比率が高く、「結果的に燃費を偽っていないとしても、女性は企業の不正をもっとも嫌う。販売へのマイナスのインパクトは小さくない」(スズキ販売店)と今後の影響を懸念する声がある。
鈴木会長退任の可能性
こうしたなか、スズキをグローバルな自動車メーカーへと率いてきた鈴木会長の進退を含む経営責任が業界の注目を浴びる。そもそもスズキは2015年4月、過去最大規模となる187万台の大量リコールを行っているが、これも国土交通省の監査による指導によるものだ。鈴木会長による長年にわたるトップダウン経営が浸透している一方で、売上高が3兆円規模にまで成長したことから社内の隅々にまで目が届かなくなり、不祥事が相次いで発覚している。