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シャープ倒産を視野に銀行が「破綻懸念先」区分に…鴻海との提携失敗との判断か

文=編集部
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 この時、シャープの再建に向けて貸出金の一部を株式に振り替える「債務の株式化(DES)」によって1000億円規模の金融支援が行われた。DESを実施した場合、銀行は格付けを強制的に「要管理先」に引き下げることになっているため、みずほもそのようにした。

 シャープはDESによって借入金が軽減され、バランスシート上の負債を大幅に減らすことに成功したが、それでも再建できなかった。

 今回、債務超過に転落したため、三菱UFJは「破綻懸念先」に債務者区分を引き下げ、1000億円程度の不良債権処理を行った。

 前出の日経新聞記事では、「三菱UFJの16年3月期決算の純利益は前の年から約8%減って9514億円と1兆円を割った。仮にシャープの追加費用がなければ、過去最高だった15年3月期の1兆337億円を超える可能性があった」として、シャープの不良債権が三菱UFJの業績にも影響を及ぼしたことを示した。

鴻海を推したみずほ、距離を置く三菱東京UFJ

 シャープは債務超過に転落したのだから、みずほも「破綻懸念先」とするのがセオリーだが、「要管理先」に据え置いた。

 シャープと鴻海の資本提携の先行きをどう見るかで2つの銀行の判断は分かれた。みずほは鴻海との提携でシャープの再生は可能と判断し、対する三菱UFJは提携失敗の可能性を債務者区分に織り込んだといえる。

 三菱UFJが「破綻懸念先」に格下げしたのは、シャープと資本提携を約束しながら13年春に白紙に戻した鴻海への不信感があるためといわれている。

 一方、みずほは鴻海と親密な関係にある。みずほと鴻海が取引を始めたのは2000年。みずほの前身の1つである第一勧業銀行が融資した。規模は小さかった鴻海が成長するにつれ、みずほが主幹事となってシンジケートローン(国際協調融資団)を組成したりもした。その後もみずほは鴻海と親密な関係を維持しており、さらにシャープのメインバンクでもある。

 シャープは官民ファンドの産業革新機構と鴻海が激しい争奪戦を演じた。一時は革新機構が有力とみられていたが逆転した。形勢が逆転したのは、16年に入りメインのみずほが鴻海案を支持する姿勢を鮮明にしたからである。これで革新機構から鴻海に流れが大きく変わったといわれている。シャープの再建で、鴻海とみずほがタッグを組むかたちになった。

 三菱UFJは、鴻海とは一定の距離を置いているが、しっかりソロバンを弾いている。もし、鴻海の支援によってシャープの業績が回復すれば、債務者区分をプラスの方向に変更できる。そうすれば、すでに処理したシャープの貸倒引当金が戻入金となり、利益として計上できる。「破綻懸念先」は債権の7割を貸倒引当とする。そのため、シャープが「要管理先」に格上げになれば、引き当てた1000億円を利益として計上できるわけだ。日本銀行のマイナス金利の導入でメガバンクの経営環境は一段と厳しくなっている。1000億円の“隠し利益”があれば、もしもの時には業績の有力な下支えになる。

 はたして、シャープは死に体なのか。それとも蘇生できるのか。メイン、サブの大手両行のシャープに対する見解の違いは示唆に富んでいる。
(文=編集部)

BusinessJournal編集部

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