電通の変貌、なぜ脱「伝統的広告代理店」加速?広告とコンサル、垣根消失&相互侵食で競争
一方で、日本の伝統的な広告代理店も、デジタル領域への進出を進めている。電通は電通デジタルを設立する。これは、電通のデジタルマーケティング部門、運用型広告のネクステッジ電通、CRMの電通イーマーケティングワンを統合したものだ。これにより、単なる代理店機能を提供するだけでなく、デジタルマーケティング領域のコンサルティングに進んでいこうとするものである。
先に述べたとおり、企業がデジタルマーケティング領域を検討する場合、広告宣伝部長マターではなく経営会議マターになるのだから、この電通の取り組みは、至極真っ当な取り組みだといえる。
外資系コンサルティング会社が、「コンサルティング+デジタルマーケティング」へ。伝統的な広告代理店が、「デジタルマーケティング+コンサルティング」へ。お互いが、お互いの領域へ踏み込んでいくわけだが、どのような競争になっていくのだろうか。
技術進化をいかにビジネスに導入するか
そもそも、デジタルマーケティングといっても、その領域にはいろいろなテーマがある。デジタルメディア、アドテクノロジー、データドリブンマーケティング、デジタルコンテンツマーケティング、モバイルプロダクション、SNS、SEOなど、米国発のテーマなのでカタカナばかりだが、検討すべき範囲は多い。
この中でも、ビッグデータを解析し示唆を得るデータドリブンマーケティングは、もともとその領域を得意としてきたIBMやアクセンチュアが強いし、グーグルが「Googleアナリティクス」をコンサルティング機能と共に提供してくると、これも大きな脅威となる。
今回のケースを見ていくと、伝統的な広告代理店がデジタルマーケティング戦略立案の上流工程まで入っていきたいということだが、人材育成、組織能力の獲得スピードを考えると、かなり大変な道程になるということがいえる。
一方、外資系コンサルティング会社が手薄なのが、クリエイティブ機能だ。米国では、コンサルティング会社のクリエイティブエージェンシー買収が相次いでいる。買収は別にかまわないのだが、PMI(買収後の組織統合)が腕の見せ所になるだろう。左脳中心のコンサルティングと右脳中心のクリエイティブは、プロトコルが大幅に異なるからだ。社内でさまざまな衝突を生じながら、よいアウトプットを出せるか、特に日本市場での外資系コンサルティング会社のパフォーマンスは、その結果に期待したい。