「マイナンバー(個人番号)が保存されたパソコンの修理はお受けできません」――
パソコンメーカーが相次いでそんな対応を打ち出し、ユーザーの不安が高まっている。順調に滑り出したとはいいがたいマイナンバー制度に、またひとつ、厄介な要素が浮き彫りになったかたちだ。
マイナンバーが入ったパソコンの「修理拒否」を表明しているのは、富士通や、ヒューレット・パッカード系列の日本HP、エプソン系列のエプソンダイレクト。富士通のパソコン修理規定はマイナンバー法制度の運用が始まった今年1月1日付で改定され、個人向けパソコン用の「修理ご依頼時の注意事項」として次の1項が記されている。
「対象機器の記憶装置(ハードディスク等)にマイナンバー(個人番号)が記憶されたデータがある場合には、修理をお受けできません。お客様は、修理をご依頼される前に、お客様の責任においてマイナンバー(個人番号)を消去していただくものとします。なお、修理および診断作業の過程で記憶装置(ハードディスク等)にマイナンバー(個人番号)が記憶されたデータが確認された場合には、修理を実施せずに、お預かりした対象機器をお客様に返却いたします」
日本HPは「カスタマーサポート業務(修理業務)においても、マイナンバーを含むデータを日本HPへ持ち込むことを認めない方針とする」、エプソンダイレクトも「修理をご依頼の際は、必ず事前に修理対象品(記憶内容を含む)にマイナンバーが含まれないことをお客様ご自身でご確認をお願い申し上げます。お客様からの修理依頼をもって当該ご確認のご表明として修理をお受けします」との見解を示した。
富士通によると、マイナンバーに関係なく、パソコンを修理に出してもらう際にはデータはユーザーがバックアップを取ったうえで消去するのが原則。以前から、起動確認をした際に個人情報が保存されているとわかった場合には、ユーザーに連絡をして「消去していいかどうか」を確認していたという。
「触らぬ神に祟りなし」
ただ、マイナンバーのデータについては、メーカーが消去することはマイナンバー法が定める個人番号関係事務の「委託」にあたり、同法に基づいて、漏えいなどを防ぐために個人番号関係事務実施者(ユーザー)の「監督」の下で実施する必要がある、と解釈した。このため、メーカーが勝手に消去するわけにはいかないと判断し、いったんパソコンを返却してユーザーに消去してもらうとの規定をあえて設けたという。