未成年世代、今の60代以上世代より1億円も税金等の負担格差…消費増税延期でさらに増
いよいよ、日本政治史上初めての「18歳選挙権」、すなわち選挙権が20歳以上から18歳以上に引き下げられたなかでの参議院選挙が始まる。投開票は7月10日である。
マスコミ報道では、アベノミクスの成否をめぐって選挙戦を繰り広げる与野党の動向にフォーカスする傾向が強いが、18歳選挙権が実現した背景のひとつとして、孫は祖父母よりも1億円も損をするという「世代間格差」や、「シルバー民主主義」に対する国民の関心が急速に高まったことも大きい。
日本の政府債務(対GDP)は200%を超えており、先進国のなかで最悪の水準にあるが、世代間格差が発生する主な原因は、恒常化する財政赤字や賦課方式の社会保障にある。
このような状況のなか、ごく最近まで安倍首相は2017年4月の消費税率10%への引き上げについて、「リーマン・ショックのようなことが起こらない限り、増税を予定通り行っていくことに変わりない」旨の発言をしていたが、先般(6月1日)、安倍首相は記者会見を行い、消費増税の再延期を正式に表明した。延期幅は19年10月までの2年半とする見込みである。
では、増税再延期で世代間格差はどのくらい拡大するのか。この実態は「世代会計」という手法でも把握でき、たとえば60歳以上の世代と将来世代(0-19歳を含む)の負担の格差、つまり「世代間格差」の大きさとしても示すことができる。
世代会計
この世代会計とは何か。それは、「国民が生涯を通じて、政府に対してどれだけの負担をし、政府からどれだけの受益を得るか」を推計する手法をいい、具体的には、「20代」「50代」といった世代ごとに、その生涯の受益(年金、医療・介護といった政府の公共サービスから得られるもの)と負担(公共サービスを供給するのに必要な税金・保険料といったもの)を推計して、純受益(=受益-負担)を試算する。
内閣府「05年度版・年次経済財政報告」の付注を参考に、筆者が試算した結果によると、60歳以上の世代と将来世代との世代間格差は約1億2000万円にも達し、これは普通のサラリーマンの生涯賃金を2億円とすると、約5割にも達する格差である。このような実態を、世代会計の提唱者であるボストン大学のコトリコフ教授は「財政的幼児虐待」と呼び、その改善を訴えている。