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キヤノンを蝕む危機…「博打的」巨額買収で急速に財務体質悪化、負債膨張で格付け引き下げ

文=編集部
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 富士フイルムは地団駄を踏んで悔しがった。東芝が独占交渉権をキヤノンに与えた理由を開示するよう、東芝に質問状を突きつけたほどだ。富士フイルムの古森重隆会長兼最高経営責任者(CEO)は、決算会見の席上で東芝メディカルの売却先がキヤノンに決まったことについて「残念だ」と述べ、悔しさを隠さなかった。逃がした魚は大きかったが古森氏の切り替えは早く、「(東芝メディカルの買収のために用意した資金は)医薬品と再生医療で充分に使い道がある」と前向きな発言もしている。

 富士フイルムは、ケガで失われた膝の半月板の治療などで期待される再生医療に乗り出す。現在手掛けているヒトの細胞とは別の細胞を活用し、先端医療の全域をカバーする体制を整える。15年3月、米再生医療ベンチャーのセルラー・ダイナミクス・インターナショナル(CDI)を370億円で買収し、iPS細胞(人工多能性幹細胞)分野にも乗り出した。CDIはiPS細胞を安定的に大量に生産する技術を持っており、iPS細胞を使って目や心臓、神経疾患を治療する薬の治験を19年までに始める計画だ。

ニコン、リコーも医療分野に参入

 ニコンは15年2月、眼科向けカメラで世界最大手の英オプトスを480億円で買収。オプトスは目の瞳孔から光を入れて網膜の表面を撮影する眼底カメラで、世界市場の3割強のシェアを持つ。オプトスが持つカメラ技術や販路を生かし、ニコンは17年3月期に医療機器事業で1300億円の売り上げを目指している。

 出遅れていたリコーも参入してきた。横河電機から脳磁計事業を譲り受け、16年4月から事業を始めた。脳磁計とは、脳で発生した微弱な磁場を検出し、脳が正しく機能しているかどうかを見るもので、主にてんかんの治療に用いられる。リコーの技術力を生かし精度を高め、25年までに医療分野で500億円の売り上げを目標にする。ちなみに脳磁計の買収額は非公開だ。

 医療機器の分野は家電製品やスマホと違い、中国、韓国、台湾勢の参入が遅れている。製品の価格下落もデジタル家電に比べると緩やかで、日本勢に有利に働く。メス、注射器などの手のひらサイズのものから、MRI、重粒子がん治療装置など巨大なものまで、医療用機器は多岐にわたる。

 世界市場のガリバー的存在は米ジョンソン・エンド・ジョンソンだが、得意分野で世界に通用する製品を持っている日本企業は多い。オリンパスの消化器内視鏡、シスメックスの自動で血液中の赤血球と白血球の数を測定する自動血球計数装置、テルモのカテーテルなどがそうだ。

 世界市場で通用する製品を新たに生み出すために必要なのは、ひとえに開発力と創造力、オリジナリティである。
(文=編集部)

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