そこまでして獲得したランパス客がリピーターになるかというと、残念ながらほとんどがそうではない。彼らが求めているのは「安くランチができる場所」であり、お店そのものではない。誤解をおそれずに言ってしまえば、ランパスは決しておいしいお店を紹介する本ではないからだ。読者が料理の味うんぬんよりもコストパフォーマンスを求めてやってくるという点が、ランパスとグルメ本の決定的な違いである。
店側にとっても、割引目当てにやってくるお客より、それとは関係なしにやってくるお客のほうがありがたい。「お客様はみな平等」とはいっても、どちらか一方を取るなら、一般客のほうを優先してしまうのが心情だろう。
かくして、ランパス客からは先に述べたような不平不満が噴出することになる。そしてSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)や、「食べログ」といったレビューサイトで、やれ「サービスが悪い」とか、やれ「料理がおいしくない」などといった批判にさらされてしまうことになる。
宣伝のつもりでよかれと思ってやったことが、逆に店の評判を落としてしまうことにつながってしまうのだ。
実際にインターネットなどでランパスを使っているユーザーの声に耳を傾けてみると、「割引率が低い店が多くなった」「掲載店で行きたいお店が少なくなった」「ランパスに掲載されたお店がすぐに閉店した」など、掲載内容の悪化を嘆く意見は多い。
似たように登場時はもてはやされた割引サービスに、共同購入型クーポンを提供するサイト「グルーポン」が挙げられるが、そこでも割引サービスが店側にとって大きな負担となり、経営が立ち行かなくなったといった問題がよく取り沙汰された。結局、グルーポンは2011年にサイトを通して販売したおせち料理がスカスカだったという事件が大きな社会問題となり、潮が引くようにブームは去った。
しかしながらランパスに追随してか、「食べログ」でも月額540円で一部の掲載店のランチが500円で食べられる『ワンコインランチ』というサービスを昨年より始めていたり、そのほかLINEやフェイスブックなどのSNSを利用したクーポンの登場など、割引サービスはいつの時代も根強い人気を誇っている。
競争激しい飲食業界を生き残っていくため、飲食店も少しでも店の売上を上げる効果がありそうなものなら何でも使いたいだろうが、長く商売を続けていくことを考えると、本当にお客のために必要なサービスというものをしっかり見極めていくことが必要なのかもしれない。
(文=編集部)