パンツがバカ売れで絶好調のしまむら、成長終了の兆候…極限の超効率至上経営がアダに
オペレーション経営を追い求めてきた
野中社長は、しまむらの3代目社長だ。しまむらは、創業者の島村恒俊(のぶとし)氏が初代社長(在任:1953~90年)として88年に上場公開した。中興の祖ともいえる藤原秀次郎氏が2代目(同90~2005年)を務めた。初代以外は創業家ではない、従業員社長だ。
ユニクロがSPA(製造小売)というビジネスモデルを確立して成功したのとは対照的に、しまむらは基本的には流通小売業である。つまり、仕入れたものを販売するという、形態としては従来型の小売ショップチェーンだ。しかし、2代目の藤原社長が開発したのは、ユニクロとは異なるビジネスモデルである。
しまむらの店舗は、郊外におけるロードサイド店が原則。土地の選択に余裕が持てる。各店はそのサイズや棚の位置などが徹底的に本社主導で共通化されている。そして、どの棚にどのアイテムを置くかまでを本部がすべて決めている。販売価格も本部が決める。全店の売上データも単品まで細分化して管理しているのだ。各店で意思決定をすることを徹底的に減らして、パートの店員が最低限の人員で運営できるようにしているのだ。
一方、本社ではセントラルバイイング制(本部一括仕入制)により、3カ月先の先読みを行って品揃え計画を立て、100名以上のバイヤーが500社以上のサプライヤーと緊密に情報交換をして仕入れ決定をし、原則として返品なしの売り切りというビジネスモデルだ。
私はこれを「オペレーション経営」と呼んでいる。自社小売チェーン全体のオペレーションの効率を徹底的に推し進めるやり方だ。
次の成長はどこにある
しまむらの足元の好調に目を奪われ、「ユニクロが追いつけないしまむら経営」とか「次の成長は」と囃す論調が見えるが、私の見解は異なる。
「15年、16年と好調となったしまむらは、それ以上に成長を続けられるのだろうか」
まず、2社の日本国内における店舗数が大きく違う。「違う」というのは、しまむらのほうが多いのだ。しまむらの店舗数が2015店、ユニクロが846店(いずれも16年5月末現在)だ。しまむらの国内売上が5400億円強、ユニクロは7800億円強である。
しまむらは、郊外ロードサイド型の出店では限界に近づいていると私は見る。田中社長は「3000店舗体制に向けて、組織運営とコンピューターシステムを新しくする」(16年期決算発表会)と勇ましかったが、マクドナルドでも3000店を達成したら逆に飽きられてしまったことが思い起こされる。