店の外では「コーヒーチケット」なども販売していた。コーヒーと名前がつくが、ソーダ水やコーラ、コーンスープなどにも使え、1冊当たり最大で760円お得なものだ。買いに来る人も多かったが、コーヒーチケットが浸透している名古屋地区の新店舗に比べると、この日の販売数は少なかったという。今後は、こうした新たな生活習慣への訴求も課題だろう。
「2級・3級道路」への出店がコメダ流
心配された混乱もなく、無事に初日の営業を終えた。東札幌5条店の立地を改めて見てみると、札幌コンベンションセンターに近く、周辺にはイオンやマックスバリュー、イーアス札幌といった大型商業施設がある。
こうした郊外型店の前を走る道路は、俗に「1級道路」「2級道路」「3級道路」と呼ばれるそうだ。1級道路は国道のような地域の重要交通路だが、コメダが得意な出店は「1級道路ではなく、日常生活に根づいた2級や3級道路沿いで、土地代や賃料も安いのが特徴」(担当役員)だという。その分、敷地面積や駐車場を広く確保するのだ。
道内の交通事情にも詳しい地元在住者は、コメダの出店地域について、このように語る。
「東札幌5条店に近い菊水・東札幌エリアは、公共施設や商業施設もあり、近年はマンション建設も増えています。同店の前の道路である東札幌循環通は朝夕以外の交通量は多くなく、これからの発展が期待される立地です。コメダは面白い場所に出店したと思います」
この後、コメダは年内にも札幌市内に別店舗の開業を予定しているそうだが、駅から遠く離れた場所での出店も検討しているという。こちらもコメダの真価が問われるだろう。
「新しもの好き」といわれる札幌市民の支持を得て、好調なスタートを切った東札幌5条店だが、モーニングやコーヒーチケットに象徴される名古屋型喫茶店が根づいていくのか。新店舗のオープンは、準備してきた関係者にとって、ゴールであると同時にスタートでもある。
一方で、道産子は「熱しやすく冷めやすい」気質も併せ持つといわれる。「夏は行列できても、底冷えする冬に行列する人はいない」(地元在住者)という気候事情もある。関係者もそこはわかっており、「しばらくは好調でしょうが、1年たってみないと成果はわかりません」と慎重な口ぶりだった。筆者も冷静にコメダ北海道進出の今後を見守ることにしたい。
(文=高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント)