3ナンバー車となったトヨタ「カローラ」人気の理由と購入時の注意点
どんなクルマなのか?
トヨタ自動車「カローラ」は、ファミリーから営業車に使う法人まで、幅広いユーザーに愛用されている小型車です。バリエーションは豊富で、2019年に現行型へフルモデルチェンジされたセダンとツーリング(ワゴン)、18年に発売されたスポーツ(5ドアハッチバック)、さらに先代型の継続生産車となるアクシオ(セダン)とフィールダー(ワゴン)も揃えています。
従来のカローラは、5ナンバーサイズのセダン&ワゴンとして発展してきました。しかし、新たに発売されたセダン/ツーリング/スポーツは、プラットフォームなどを海外版カローラと共通化する3ナンバー車に拡大されました。
そこで、5ナンバーサイズに収まる先代型のアクシオとフィールダーも生産を続けているわけです。ほかの車種なら、3ナンバー車に拡大されても旧型を併売しませんが、カローラには法人を含めて5ナンバーサイズにこだわるユーザーも多いです。さまざまなニーズがあり、販売台数も多いため、旧型も一緒に売り続けています。
人気を得ている理由
カローラは19年にセダンとツーリングがフルモデルチェンジされると、売れ行きを伸ばしました。日本自動車販売協会連合会のデータによると、19年10~12月と20年3月には、小型/普通車の車名別販売ランキングで1位になっています。
この登録台数は、カローラシリーズを合計したものです。20年3月に1万6327台を登録したときの内訳(販売比率)は、セダン:18%、ツーリング:49%、スポーツ:14%、アクシオ:9%、フィールダー:10%です。
この販売比率を見ると、ワゴンのツーリングが約半数を占めますが、それ以外はバランスの良い売れ方です。先代型のアクシオとフィールダーを合計すると19%になり、3月には3100台を超えたので、同じくトヨタの「クラウン」に迫る台数でした。
継続生産車のアクシオとフィールダーは、5ナンバーサイズによる運転のしやすさが特徴です。設計の新しいセダン/ツーリング/スポーツは、3ナンバー車とあって走行安定性と乗り心地が優れ、操舵に対する反応も正確です。内装のつくりとシートの座り心地も上質に仕上げました。シリーズの総合力が、カローラ人気の理由といえるでしょう。
なお、以下の採点とコメントは、セダン/ツーリング/スポーツの評価です。この3タイプはホイールベース(前輪と後輪の間隔)の数値も等しく、一部エンジンの組み合わせは異なりますが、前後席の居住性などは基本的に同じです。
気になる8つのポイントチェック&星取り採点
(1)居住空間の広さとシートの座り心地
★★☆☆☆
インパネなど内装のつくりはシンプルですが、質感は高いです。居住性は前席は快適で、後席は足元空間が狭めです。
(2)荷物の積みやすさとシートアレンジ
★★★☆☆
セダンのトランクは広いです。ツーリングの荷室はワゴンでは狭めで、荷室長はスポーツより120mm長い程度です。
(3)視界や小回り性能など運転のしやすさ
★★★★☆
側方と後方の視界はあまり良くないです。全幅は3ナンバー車でも1745mmに抑えられ、小回り性能は良いです。
(4)加速力やカーブを曲がるときの安定性
★★★★☆
1.8Lノーマルエンジンは実用回転域の駆動力に余裕があり、ハイブリッドは静かです。走行安定性も良好です。
(5)乗り心地と内装の質感などの快適性
★★★★☆
17インチタイヤ装着車は乗り心地が少し硬いですが、16インチは快適です。内装のつくりも丁寧で満足できます。
(6)燃費性能とエコカー減税
★★★☆☆
1.8Lエンジンはアイドリングストップも付かず、WLTCモード燃費は14.6km/Lです。ハイブリッドは29km/Lです。
(7)安全装備の充実度
★★★★☆
衝突被害軽減ブレーキは昼間の自転車と昼夜の歩行者にも対応して、後方の並走車両なども検知できます。
(8)価格の割安感
★★★★☆
各種の安全装備に加えて7インチのディスプレイオーディオも標準装着され、価格のわりに装備を充実させました。
選ぶときに確かめたい3つのメリット
・16インチタイヤ装着車は、走行安定性と乗り心地のバランスが優れています。
・外観や内装のデザインが上質で、前席は長距離移動時でも座り心地が快適です。
・衝突被害軽減ブレーキなどの安全装備と、各種の快適装備を充実させています。
後悔しないための3つの要チェックポイント
・後席の足元空間とワゴンの荷室長は先代型よりも狭く、短くなりました。
・1.8Lと1.2Lターボエンジンには、アイドリングストップがほしいです。
・セダンとツーリングの1.2Lターボは6速MT専用で、1.8Lより価格が割高です。
こんなユーザーにおすすめ
現行型は3ナンバー車になりましたが、セダン、ツーリングともに全長は4500mm以下で、全幅も1750mmを下回ります。先ごろ、5ナンバーサイズのセダンであったホンダ「グレイス」が廃止されたので、今でもセダン&ワゴンのなかではコンパクトな部類に入ります。ファミリーユーザーは、後席と荷室(ツーリング)の広さに注意して選びましょう。
今後のモデルチェンジ予想
19年に発売されたので、フルモデルチェンジは当分の間行いませんが、特別仕様車は時々設定します。20年5月に加わったG-Xプラスのように、ベーシックなG-Xや中級のSに、関心の高まっている安全装備を割安な価格で加えたタイプが用意されます。
最近の販売状況と安く買うための商談方法
売れ行きは好調です。今はトヨタの全店で全車を買えるようになったので、販売店の立地条件も含め、複数の販売系列で条件を比べて買う方法もあります。販売会社によって、残価設定ローンの残価率や金利が異なる場合もあり、同じ条件で見積りを取って比べると良いでしょう。
リセールバリュー/数年後に売却するときの価値
19年に登場した比較的設計の新しい車種なので、数年後の下取査定が大幅に下がることはないでしょう。残価設定ローンの残価率は、販売店によって若干異なりますが、3年後で47%前後が多いです。セダン&ワゴンは42~45%が中心なので、条件が少し優れています。
これが結論!/このクルマの総合評価&コメント
★★★★☆
セダン&ワゴンのなかでは、ボディは今でも小さな部類に入り、小回り性能も良いです。運転のしやすさを求めるユーザーのニーズに合っています。また、ボディを先代型の5ナンバーサイズから3ナンバーサイズに拡大した代わりに、エンジンやプラットフォームも刷新され、動力性能、走行安定性、乗り心地が向上しました。
注意したいのは、走りや快適性が向上した代わりに、ボディを拡大させながら後席とワゴンの荷室が狭くなったことです。3名以上で乗車したり、荷物を積む機会の多いユーザーは、居住性と積載性に注意すると良いでしょう。
グレードは、機能と価格のバランスを考えると、16インチタイヤを履いたノーマルエンジンのS、あるいはハイブリッドSが良いです。1年間の走行距離が1.5万kmを超えるユーザーは、ハイブリッドを選ぶと燃料代の節約効果が際立ちます。
(文=渡辺陽一郎/カーライフ・ジャーナリスト)