セブン&アイ・ホールディングス(HD)のお家騒動は、井阪隆一氏が社長に昇格することで決着した。最高経営責任者(CEO)はいなくなった。
「コンビニの帝王」の座から去った鈴木敏文氏は名誉顧問となり、本社から新しいオフィス(ホテルニューオータニ・オフィス棟)に移った。創業者の伊藤雅俊名誉会長と対立して退任に追い込まれた鈴木氏は「老兵は死なず、ただ消え去るのみ」という、枯れた心境ではなさそうだ。
複数のメディアとの単独インタビューに応じ「資本と経営の分離は当たり前のことだ」と創業家に対する批判を繰り返している。
「日経ビジネス」(日経BP)は鈴木氏に複数回のロングインタビューを行い、それを基に『鈴木敏文 孤高』の集中連載を始めた。第1回(8月22日号)では、「自分で辞めると言ったのであって、辞めさせられたわけじゃない」「いいきっかけでした。だから悔いが残るということはない」と語っている。本人の認識と世間の評価が大きくズレていることを浮き彫りにした内容だった。
鈴木氏の新しいオフィスが鈴木氏を支持するグループの拠点となり、新たな対立が火を噴く可能性はゼロとはいえない。
改革の第1弾は、そごう・西武とニッセンのリストラ
5月26日の株主総会で新体制がスタートした。総会後の取締役会で新社長に就任した井阪氏は「100日プラン」と銘打った、グループ戦略を早期に打ち出す方針を明らかにした。10月上旬に予定している2017年2月期第2四半期(6~8月期)の決算の場で発表する。絶対的なトップだった鈴木氏が戦線を拡大し過ぎた事業の、聖域なき改革に踏み込めるかどうかがポイントになる。
改革の第1弾は8月2日、傘下のそごう・西武が運営する百貨店2店の閉鎖と、赤字が続くカタログ通販大手、ニッセンホールディングス(HD)の完全子会社化を発表した。
17年2月末に、そごう・西武が運営する大阪・西武八尾店と茨城・西武筑波店を閉鎖する。すでに、千葉・そごう柏店と北海道・西武旭川店は今年9月末での閉鎖が決まっており、そごう・西武の店舗数は来年末には19店舗にまで縮小する。
これまでに「西武」と名がつく百貨店は少なくとも40店ほど閉店し、西武池袋本店のような地域の中核店のみが残っている。