今回の新たな店舗閉鎖に伴い、そごう・西武の社員全体の1割に当たる、45歳以上の正社員350人の希望退職を募る。
セブン&アイHDは14年、ニッセンHDの株式を議決権ベースで50.74%取得した。完全子会社にするために、ニッセンHDの株式1株に対してセブン&アイHD株式0.015株を割り当てる株式交換を実施する。ニッセンHDは赤字経営が続き、債務超過のおそれがあることから完全子会社にして、事業撤退、人員削減など大鉈を振るう。
ニッセンHDは8月25日、脇田珠樹取締役執行役員が9月27日の臨時株主総会後に社長に昇格すると発表した。市場(いちば)信行社長は退任する。債務超過寸前の状況になった経営責任を明確にするとともに、トップの若返りを図る狙いだ。新社長は44歳で市場氏より18歳若い。
百貨店のミレニアムリテイリング(現そごう・西武)を買収したのは05年。セブン&アイHDが日本を代表する総合流通グループとなるきっかけとなった。
鈴木氏は西武・そごうとニッセンHDをインターネット通販と実店舗を融合させるオムニチャネル戦略を進めるうえでの有力なカードと位置づけていた。オムニチャネルは鈴木氏の次男・鈴木康弘氏が担当した。康弘氏を役員に大抜擢したことで「世襲への準備」と批判される原因をつくった。井阪・新体制では、康弘氏は最高情報責任者(CIO)から執行役員オムニチャネル顧客情報管掌に“格下げ”となった。CIOという職位もなくなった。井阪新社長は、まず鈴木氏が買収した事業にメスを入れる。
業績の足を引っ張っているのが通販と百貨店
セブン&アイHDの16年3~5月期連結決算で、井阪新体制が抱える難題が見えてきた。
売上高にあたる営業収益は前年同期比3%減の1兆3947億円、営業利益は0.5%減の814億円。減収・営業減益となった。セブン-イレブン・ジャパンのコンビニエンスストア事業の営業利益は4%増の688億円。全社の営業利益の84%を叩き出している。コンビニの一本足打法が、さらに強まっている。
足を引っ張っているのは、ニッセンHDの通信販売事業。同部門の営業収益は前年同期30%減の266億円に激減、営業赤字は27億円から29億円に拡大した。
そごう・西武の百貨店事業も厳しい。3~5月期の営業収益は4%減の2045億円、営業赤字は9200万円から10億円に膨らんだ。