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追い込まれたAさんは、社内のハラスメント通報窓口に相談した。これまで自身が受けたハラスメントの実態と、ハラスメントが起きているのに周囲が無関心であることに対する問題を会社側に提起。のちに管轄の労働局に労災申請も行った。
しかし、会社側の反応は冷たいものだった。Aさんが「労災を申請したい」と申し出ると、人事部の障害者雇用担当者は不快感を露わにし、声を荒げた。
「労災申請しないと言って、一度、とりやめましたよね? なぜ労災申請するんですか? なぜですか? なぜですか?」
「労災が認められなかったら訴訟ですか?」
担当者のこのような発言に対して、Aさんは障害者虐待防止法に則った通報を行った。結果、人事部は障害者雇用促進法による行政指導を受けている。
その後、会社側はAさんに契約期間の変更を一方的に通告してきたのである。Aさんの契約期間は当初「1年間」という条件であったが、それを「6カ月間」に短縮するというものであった。理由は「私傷病の精神疾患で休職していたため」ということであった。契約期間が半減というだけで十分「不利益変更」という違法行為に当てはまるが、それだけではない。「いつでも契約を切ることができるんだぞ」と、Aさんに対して雇い止めを示唆する効果もある。あまりにも一方的で、理不尽なやり方であるといえよう。
Aさんは今後とも昇給なし、退職金なし、賞与は減額という薄給に甘んじなければならない状況である。
(文=新田龍/働き方改革総合研究所株式会社代表取締役、ブラック企業アナリスト)
※後編へ続く
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