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舘内端「クルマの危機と未来」

トヨタの新型プリウスPHV、満充電に14時間…それでも人類の目指すべき方向性に一致

文=舘内端/自動車評論家、日本EVクラブ代表

 ようやくHVが定着したところに、今度は「充電できるハイブリッド車」としての新型プリウスPHVの登場である。混乱、誤解があっても仕方ない。

 誤解の大本は充電だ。とくに「PHVには充電器の設置が絶対に必要だ」という誤解が渦巻いている。そうした充電に関する誤解を払拭する意味だろうか。新型プリウスPHVでは、一般家庭の100Vのコンセントでも充電できる。

100V、6A、14時間

 新型プリウスPHVは、100Vのコンセントから6Aという少ない電流で充電できる。特別な工事をせずに、玄関の外壁に取り付けられたコンセントに車載のケーブルを接続すれば、新型プリウスPHVの充電は可能だ。ただし、60kmのEV走行を可能にする電気を充電するには、満充電までに14時間必要だ。

 EVあるいは他のPHVでは、200 Vで充電するケースがほとんどである。家の配電盤(ブレーカーが入っているケース)まで200Vが来ているので、そこから電線をひいて専用のコンセントを取り付ければ充電できるが、専門の業者に頼まなければならない。また、コンセントもEV、PHV専用のものでなければならず、少々面倒である。

 新型プリウスPHVは、その点、面倒がない。しかも、充電電流は6Aと比較的少ない。ちなみに6Aというと、電気コタツ、電子レンジ、アイロンといった家電で使う電気である。30A契約の家庭では、5分の1の電流なので、他の家電を使いながら充電しても、ブレーカーが落ちて停電する心配はあまりない。

 しかし、14時間はかかりすぎる。通勤に間に合わないという人には、200Vを勧める。2時間20分で満充電できる。さらに急速充電という手もある。充電の使い分けには、少しばかり慣れが必要だろう。

ライフスタイル変更型か、従来型か

 次世代車には、生活習慣の変更を求めるタイプと、従来からの生活習慣のまま使えるタイプの2種類がある。
 
 クリーン・ディーゼル車やHVは後者だ。これまでの自動車生活のままに、ガソリンスタンド(GS)で給油すれば走れる。また山間地等、GS過疎地も増えたとはいえ、GSの普及は進んでいる。これらの生活習慣持続型の次世代車であれば、心配なく使えるので、普及に支障はない。ただし、ディーゼル車は環境負荷が少ないとはいい切れず、エネルギー安全保障を危うくするのはHVと同様である。

舘内端/自動車評論家

舘内端/自動車評論家

1947年、群馬県に生まれ、日本大学理工学部卒業。東大宇宙航空研究所勤務の後、レーシングカーの設計に携わる。
現在は、テクノロジーと文化の両面から車を論じることができる自動車評論家として活躍。「ビジネスジャーナル(web)」等、連載多数。
94年に市民団体の日本EVクラブを設立。エコカーの普及を図る。その活動に対して、98年に環境大臣から表彰を受ける。
2009年にミラEV(日本EVクラブ製作)で東京〜大阪555.6kmを途中無充電で走行。電気自動車1充電航続距離世界最長記録を達成した(ギネス世界記録認定)。
10年5月、ミラEVにて1充電航続距離1003.184kmを走行(テストコース)、世界記録を更新した(ギネス世界記録認定)。
EVに25年関わった経験を持つ唯一人の自動車評論家。著書は、「トヨタの危機」宝島社、「すべての自動車人へ」双葉社、「800馬力のエコロジー」ソニー・マガジンズ など。
23年度から山形の「電動モビリティシステム専門職大学」(新設予定)の准教授として就任予定。
日本EVクラブ

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