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なぜ十勝マンゴーとリステリンは大ヒットし、牛丼チェーンの肉はパサパサになったのか?

構成=小野貴史/経済ジャーナリスト
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永井 数十年前の腕時計のバリュープロポジションは「正確な時を知らせること」でした。でもこれって今では、誰でも持っているスマートフォン(スマホ)で簡単にわかりますよね。つまりこのバリュープロポジションの賞味期限は、終わっているんです。このような現象を「コモディティ化する」と呼ぶのですが、コモディティ化したままではなかなか売れません。そこで今の腕時計は新しいバリュープロポジションを作っています。

 たとえばジョギング専用ウォッチは「時計で体力を強化する」、あるいは登山専用ウォッチは「時計が厳しい環境でも頼れる登山の武器になる」という、他の時計やスマホではできない価値を提供して、お客がお金を出す理由をつくり出しています。ライバルが存在しない市場を「ブルーオーシャン」と呼びますが、バリュープロポジションもこれに近い概念です。

――一方で、せっかくブルーオーシャンを切り拓いても、似たような商品が参入してバリュープロポジションがコモディティ化すると、レッドオーシャン(競合が激しい市場)に移行しますよね。たとえばどんな事例があるでしょうか?

永井 牛丼店チェーンがまさにそうなっていますよね。かつては「うまい、安い、早い」を売りにしていましたが、ライバルが増えてこれが当たり前になると、「うまい、安い、早い」だけではコモディティ化してしまいます。こうなると過当競争になり、安売り合戦に入って利益率が低下し、牛丼市場はレッドオーシャンに変化してしまったのです。

 価格が下がるのは消費者にとっては大歓迎……と言いたいところですが、レッドオーシャンは品質の低下を招きがちで、じつは消費者にとってもマイナスです。牛丼の場合、かつての牛丼店はジューシーで美味しい牛肉を出していましたが、コスト削減が繰り返されて食材の質が下がった店も少なくありません。先頃、私は久しぶりにある牛丼店に入りましたが、ひと口食べただけで、パサパサして旨味のない牛肉でした。ちょっと残念に思いましたね。

競争を避けるための戦略

――ジョギング専用ウォッチや登山専用ウォッチはバリューポジションを確立したわけですが、こうして考えてみると、「商品開発の真の目的は何か」を考えることが大切なようですね。

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