平均給与は年63万円…地獄の食品製造業界、横流しや偽装多発の根底に「儲からなさ」
97 .6兆円は国内の全経済活動の約1割(10.5%)に当たる。ただ、このうち農林漁業は11.4兆円にすぎず、食品製造業(食品工業)がその3倍の34.9兆円であり、同国内生産で最大のシェアを誇る。これに関連流通業(卸・小売、運輸)24.7兆円、飲食店21.4兆円などが続く。
人手は多く、少ない給与を分かち合う?
食品製造業は、どんな業種か。主に、5つの特徴があるのではないか。
第1の特徴は、人手(従業員)の多さだ。今年1月発表の、従業員(従業者)4人以上の事業所が対象の経産省「工業統計調査」【編注4】によれば、従業員数は製造業全体の約740万3300人のうち、食品(食料品)製造業が15.0%(約111万2400人)を占め、全体のトップだ。人手の多さは、他の製造業に比べて、それだけ機械化や自動化、装置化が進んでいないことを示す。
第2の特徴は事業所数の多さと、立地が地域分散・密着型の点だ。製造業全体の事業所数約20万2400のうち、食品製造業は全体のうちの13.3%(約2万7000)で、これまたトップである。
また、総務省のデータ【編注5】によれば、全国の約2万7900の食品製造業事業所のうち、もっとも多く所在するのは北海道で約1900だが、これを含めた1000以上の上位5つの道県の合計シェアは25.0%にすぎない。残りは100台から900台まで幅はあるが、万遍なく全国に分散。まさに地域の食を守る、地域密着型産業だ。
第3の特徴は、低資本かつ従業員規模の小さな零細・中小企業が多いという点だ。経産省のデータ【編注6】によれば、事業所約2万4300のうち、従業員4~29人の個人経営と、同4~29人で、しかも資本金3000万円未満の零細・中小企業が全体の69.1%を占めている。
第4の特徴が、従業員の低収入だ。食品製造業の常用労働者への現金給与総額【編注7】は、製造業全体の32兆6862億円のうちの9.4%(3兆654億5200万円)にすぎない。つまり、従業員数は全体の15.0%なのに対して現金給与総額は9.4%、差し引き5.6%分も少ない。
これは付加価値額(生産額から原材料・燃料費、減価償却費などを差し引いた、人件費・利子・利潤の合計)の少なさと関係がありそうだ。食品製造業の付加価値額は、製造業全体の92兆2888億7100万円のうちの9.5%(8兆7633億3100万円)だ。