平均給与は年63万円…地獄の食品製造業界、横流しや偽装多発の根底に「儲からなさ」
さらに、「工業統計調査」の調査対象外とされる従業員3人以下の事業所について、推計による参考統計表として、「工業統計調査」に掲載されている。それで比較してみれば、格差の実態がさらにはっきりとする。
まず、前提として、14年の製造業全体の従業員3人以下の事業所数19万5300のうち、食品製造業の同事業所数は7.7%(1万5119)。その従業員数は製造業全体の38万7100人のうち、食品製造業は8.5%(3万2800人)だ。
そこで年間現金給与総額だが、製造業全体の3694億4600万円のうち食品製造業のそれは5.6%(205億7700万円)。これを従業員数3万2800人で割ると、ひとり当たりの年間現金給与総額は62万7300円にすぎない。製造業全体の同平均95万4400円の約7割(65.7%)足らずだ。
ちなみに、従業員4人以上の事業所の製造業全体の同平均は441万5100円に対し、同食品製造業ではその6割強(62・4%)の275万5600円。つまり、食品製造業の従業員は、業種間格差と規模格差のダブルパンチに見舞われている。
ひと口に食品製造業といっても、扱う品目は実に幅広い。製粉業、製糖業、製油業などの一次加工品から、即席めんや調味料などの二次加工品、それも畜産、水産から野菜、果物、パン、菓子、ビスケット、寿司、弁当、総菜など多種多様だ。その、いわば栄養摂取を含めた重要な食の安心・安全の一角を担っている現場の人々が、厳しい収入格差の状況に置かれているのが現実か。
儲かっていないのが、最大の特徴か
そして食品製造業の第5の特徴は、儲かっていないことではないか。
前述した付加価値は利益+人件費+利子の合計だが、企業の儲けぶり(収益性)を把握するため、「売上高営業利益率」をみてみよう。売上高営業利益率は、売上高に対する本業(製造・販売のみ)の儲け=営業利益の割合を示す【編注8】。
「一般的に製造業の営業利益率は5%が適正水準」【編注9】ともいわれる。ところが、05~14年の10年間では4.5が最高で、リーマンショックの影響が大きい08~09年にはいずれも1.5まで下がっている。この間、食品製造は1.9~3.2だ。
長期的に見ればどうか。入手することができた財務省の「業種別財務営業比率表」【編注10】によれば、1968~2014年度までの56年間で、食品製造業の営業利益率が5.0以上になったのは、わずか4回だけだ。それどころか、4.0以上でさえも10回にすぎない。