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トランプ米大統領でも、在日米軍撤退は「あり得ない」…日本経済好況の可能性

文=田中秀臣/上武大学ビジネス情報学部教授
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 これは、それだけの金額を日本は現時点で無駄にしているといえる。これを「機会費用」という。また、政治的・社会的な摩擦も当然に経済評価が可能な部分があり、実際にはさらに機会費用は膨らむ。

 米軍が日本から撤退することは、米国からみれば軍事的な公共支出の削減につながり、経済面だけをみればメリットのほうが大きいだろう。一方の日本にとっては、米国がそのメリットのさらなる拡大を狙って、たとえば駐留経費負担の増額や、全額負担を政治的に迫ってくる可能性はある。

 ただ、政治的・社会的コストをあえて無視すれば、予算的な規模ではたかだか2000億円を超える程度であり、金額的には限定されたものだ。もっとも、そのような要求をトランプ次期政権が要求してくれば、日本国内で政治的・社会的な問題化は避けられないだろう。

 以上から、米軍が日本から撤退する可能性は低いが、日本に対し駐留経費のよりいっそうの負担増を迫る可能性はあるだろう。ちなみに日本への核兵器保有許容だが、おそらく日本から在日米軍がいなくなれば、トランプ氏にいわれるまでもなく、国論が二分するかたちで核兵器保有が争点化することは必至である。

TPPは失効か

 さて、TPP(環太平洋経済連携協定)についてはどうだろうか。

 トランプ氏が選挙期間中に首尾一貫して話題にしていたのが、保護主義的傾向と不法移民対策だった。前者はすでに衰退産業化している国内製造業部門の雇用を維持するための発言である。そして今回の選挙結果が、その人々の熱い支持を受けたものだけに、保護主義的な立場をおいそれと変更することはないだろう。

 そのため、TPPの発効は事実上頓挫したとみていい。TPPの再交渉で製造業の「延命」を図るという方策もあるが、現段階では不透明であり、トランプ政権誕生の経緯を考えれば希望は限りなく小さい。米国との自由貿易をめぐる二国間交渉も、今後苦戦を強いられそうだ。保護主義的であると同時に、重商主義(貿易の利益がゼロサムであるという発想)が、どうもトランプ氏には濃厚に思える。このあたりは、実際に政権が動き出して、しばらく注視していく必要がある。

 ただ筆者の私見では、それほど過度の保護主義に傾斜することはなく、ましてや戦前のブロック経済化のような方向になる事態はあり得ないだろう。TPPが政治的犠牲に捧げられるかたちで終わる程度ではないか。それでも「自由貿易圏」の構築からいうと大きな痛手だろう。

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