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山田修「間違いだらけのビジネス戦略」

また最高益の日本電産、課長千人採用の異例宣言…ソフトバンクと真逆の「堅実」拡大経営

文=山田修/ビジネス評論家、経営コンサルタント

たゆまぬオペレーションの改善で筋肉質の組織に

「販管費の削減に力を注いできました。上海では14あった法人を大きなビルの1フロアに集めました。移転コストはかかったけど、その効率化、情報の共有化は大きな効果を生んでいます」

 また、社員の働き方にも変化が起きているという。

「残業を大きく減らしました。減った分は社員に還元します。半分をたとえば語学研修に使うなどしています」

「生産効率の改善で大きな効果を上げ始めたのが、工場のIoT化です。」

 IoT(Internet of Things:モノのインターネット化)とは、製造機器をインターネットで結んで管理することだ。その詳細について聞かれた社長は「他社に漏れては」との理由で明かさなかったが、こう述べた。

「片山(幹男氏、元シャープ社長)チームが大きな貢献をしてくれた。自動化で今まで7500名相当の現場要員を減らせたし、来年3月までにさらに同様な効果を見込んでいる」

 日本電産はIoT化への取り組みを同社の英語名にちなんで「Nidecスマート・ファクトリー」と名付けており、「今後順次当社の世界中の工場に導入したい」と、大きな費用削減効果余地があることを示した。

 このほかにもキャッシュフローの改善も示して、「生産性が上がっているので、機械などの生産設備への投資は相対的に減っている」と述べ、隙のない堅実経営を進めていることが窺える。

M&Aだけではない、「取り込む経営」

 永守社長は会見で「景色が変わってきている」とも述べた。規模や業容が変わってきたことにより、「良い人材が入ってきている」というのだ。さらに、「技術者や、管理職、課長でいうならこれから1000人は採用したい」と、勝ち組ならではの意欲を示した。

 創業以来、日本企業には稀有な「果敢なM&A経営」で業容を急拡大してきた永守社長だが、20年の目標として掲げた2兆円(17年3月期は1兆2000億円の見込み)に対して、「さらなるM&Aを計算しなくてもオーガニックな成長で達成できる可能性が出てきた」とした。オーガニックな成長とは、従来事業による成長のことだ。

 成長に加えて、前述したような磐石のオペレーション改善を果たしている。まことに14年のMVP経営者にふさわしい快進撃が続くことだろう。

山田修/経営コンサルタント、MBA経営代表取締役

山田修/経営コンサルタント、MBA経営代表取締役

経営コンサルタント、MBA経営代表取締役。20年以上にわたり外資4社及び日系2社で社長を歴任。業態・規模にかかわらず、不調業績をすべて回復させ「企業再生経営者」と評される。実践的な経営戦略の立案指導が専門。「戦略カードとシナリオ・ライティング」で各自が戦略を創る「経営者ブートキャンプ第12期」が10月より開講。1949年生まれ。学習院大学修士。米国サンダーバードMBA、元同校准教授・日本同窓会長。法政大学博士課程(経営学)。国際経営戦略研究学会員。著書に 『本当に使える戦略の立て方 5つのステップ』、『本当に使える経営戦略・使えない経営戦略』(共にぱる出版)、『あなたの会社は部長がつぶす!』(フォレスト出版)、『MBA社長の実践 社会人勉強心得帖』(プレジデント社)、『MBA社長の「ロジカル・マネジメント」-私の方法』(講談社)ほか多数。
有限会社MBA経営 公式サイト
山田修の戦略ブログ

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