また最高益の日本電産、課長千人採用の異例宣言…ソフトバンクと真逆の「堅実」拡大経営
今回の決算発表で、私は永守経営に2つの印象を受けた。
1つ目は、「取り込む経営」の拡大である。同社はM&Aで、手っ取り早く拡大を実現してきたが、ここにきてシャープ出身の人材や、海外子会社へ現地人経営者を外から手当てするなど、人材の面でも自覚的に展開し始めた。つまり、「経営資源の外部獲得」を企業単位だけでなく、人材でも推し進め始めたということだ。
「海外の会社を経営させるのには、日本人を派遣したのでは駄目だということを学びました」
「結局、現地人で優れたCEOを採用するのがいい。新しい人で、営業利益率15%を目指してくれる意欲がある人だ」
この「取り込む経営技法」の延長として考えられるのは、財務資源の獲得と活用ということになる。永守社長の盟友である孫正義氏が社長を務めるソフトバンクは10月、サウジアラビア系ファンドと10兆円ファンドを組成すると発表したが、まさにこのような施策である。
「M&Aする際もEBITDA(利払い・税引き・償却前利益)で10倍以上となる金額の会社は買わない」と常々公言している永守社長は、堅実な投資家でもあるので、孫氏の後は追わないのだろう。
業容を拡大する手法としてソフトバンクと異なる道を行くだろうというのが、私が感じた2点目だ。
「どの分野に出ても世界一になる。そのつもりでやらなければ経営者なんて要らない」
実際には、日本電産のビジネス分野(ドメイン)はあくまでモーター関連にある。というより、モノづくりであり製造業が基本だ。ソフトバンクのように業界、業態を超えて脱皮していくわけではない。
売上高2兆円に向けて、モーター単体だけでなく、モーターを組み込んだユニットやシステム、果てはソフトまでも傘下に収めようとしているが、その外にあえて出て行こうとしているわけではない。そこに永守氏の経営者としての節度と矜持を感じる。
「20年に年商2兆円という目標を掲げていますが、重要なのは営業利益3000億円のほう、というより営業利益率15%達成が私の目標です」
そして、「こんな会社の株を買うのがいいのですよ」と、居並ぶ証券会社のアナリストに永守社長が“吼えた”。あえてこう表現させてもらうが、本当にそうなのかもしれない。
(文=山田修/ビジネス評論家、経営コンサルタント)
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