出光、合併頓挫の全真相…「大株主に事前説明なく、おかしな話」「合併で楽、は錯覚」
出光興産の月岡隆社長と昭和シェルの亀岡剛社長は、10月13日に共同記者会見を開き、来年4月としていた合併の時期を延期すると発表した。会見では出光創業家が現計画での合併に反対していることが理由として挙げられたが、創業家が公然と会社の方針に異議を唱え、経営陣の間で合意した合併話をひっくり返すという異例の事態の裏側では、何が起こっていたのか。出光創業家代理人で弁護士の浜田卓二郎氏に話を聞いた。
――なぜ出光昭介名誉会長は、昭和シェルとの合併に反対されているのですか。
浜田卓二郎氏(以下、浜田) 合併の基本合意書が2015年11月12日に発表され、「対等の精神に基づく経営統合」と書かれているのを見て、それを昭介名誉会長がご覧になってびっくりしたのです。「こういう合併がうまくいくはずがない。経営戦略として、合併を選択すべきではない」とおっしゃられて、私に代理人の依頼がありました。そして同年12月17日に出光に意見書を提出したのですが、向こうはのんびりしておられて、「年末年始で忙しい」ということで、今年1月29日に話し合いを持ちました。そのとき、2、3枚の資料を持ってこられて、合併のメリットを順々と説明されていました。
――どのような説明だったのですか。
浜田 たとえば、「ロゴマークや出光の名前は大事にします」といったもので、合併を前提とした話でした。私と昭介名誉会長は「意見書というのは合併の条件の話を申し上げているわけではない。合併そのものが経営戦略として適切な判断とは思えない。合併というのはものすごい困難とエネルギーを必要とするものだが、出光と昭和シェルとは企業文化がかなり違う。これだけ違う企業同士が合併するためには困難を克服する時間が必要だ。5年も10年もたてばいろんな効果はあるにせよ、それを克服するのは並大抵のことではないのではないですか」と申し上げたのです。
――出光と昭和シェルとは、いったいどのような違いがあるのですか。
浜田 出光は典型的な民族資本の会社であり、昭和シェルは典型的な外資系の企業です。外資系の企業が悪いというわけではないが、やっぱり体質的な違いというのは大きいですよね。しかも昭和シェルには労働組合があり、出光にはない。そんな企業同士が合併するのは簡単な話ではないと思います。それで1月29日の時には「合併する際の条件の話じゃありません。合併そのものに反対なんです」と私から念を押したわけです。