9月、メールや内線電話、情報共有サイトなどの社内コミュニケーション基盤として米マイクロソフト(MS)のクラウドサービス「オフィス365」を全面的に導入すると発表した。富士通グループの世界16万人の従業員が対象で、17年3月から順次利用を始める。世界最大規模の導入事例となる。
富士通はオフィス365と独自ソフトを組み合わせて外販。19年3月期に年間500億円の売り上げを目指す。
IoT関連投資が増え、業績はV字回復
IT(情報技術)業界では「IoT」という名の革命が進行中だ。IoT はInternet of Thingsの略で、あらゆるモノをインターネットに接続することで新しいサービスや製品の開発につなげる。「クラウド元年」と呼ばれた10年から6年。次のステップとしてIoTに注目が集まる。
ITサービス、サーバーで国内首位の富士通は、個人向け事業を切り離す一方、クラウドサービスやIoTなどの新しい技術分野に投資を集中する。
成果が問われたのが16年4~9月期決算だった。売上高は前年同期比7%減の2兆850億円と減収だが、営業損益段階で258億円の黒字。前年同期は構造改革費用を計上して124億円の赤字だったが黒字に転換した。最終損益は118億円の黒字(前年同期は159億円の赤字)と、V字回復を果たした。
田中達也社長は1月、クラウドサービス関連の開発投資に、16年3月からの3年間で1000億円を投じ、海外展開や機能強化を進めることを明らかにした。クラウドへの移行が進むと、富士通の稼ぎ頭のサーバーなどIT機器の販売が減る。クラウド関連の投資拡大によって、IT機器の販売が減少するのを下支えする。15年3月期に2400億円だったクラウド関連事業の売り上げを、18年同期に国内4000億円、海外1000億円に増やす計画だ。
カーナビとパソコン事業は切り離す
個人向け事業は切り離す。9月、カーナビゲーションを手がける富士通テンをデンソーに売却することを決めた。富士通テンは国内カーナビ市場でシェア第3位。直近の売上高は3600億円と富士通の売り上げの1割弱を占める。
デンソーが富士通の保有株式を数百億円で買い取る。現在の出資比率は富士通が55%、トヨタ自動車が35%、デンソーが10%だが、売却後はデンソーが51%、富士通が14%となり、トヨタの出資比率は変わらない。17年度前半に売却手続きは完了する。
販売不振が続いていたパソコン事業に関して、中国レノボとの提携を正式に発表した。パソコン事業はレノボ・グループの傘下に入り、富士通は連結決算から切り離す。
(文=編集部)