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小黒一正教授の「半歩先を読む経済教室」

株式市場でリスク化する日銀…国内投資信託の6割、上場企業株式の平均5%を保有

文=小黒一正/法政大学経済学部教授
株式市場でリスク化する日銀…国内投資信託の6割、上場企業株式の平均5%を保有の画像1日本銀行(撮影=編集部)

 アメリカの次期大統領がトランプ氏に決定し、強力な経済対策を打つという思惑や、アメリカのFRB(連邦準備制度理事会)も今年(2016年)12月に利上げを行う観測があることから、アメリカの長期金利上昇(すなわち日米間の金利差拡大)を予想し、市場では急速な円安が進行している。その結果、日経平均株価も上昇している。

 年末も近づいてきたので、17年の株価予想も多くのメディアで出てくると思われるが、株価の適正水準はいくらか。正確な予想は誰もできないはずだが、ひとつの目安になるのは「株価とGDPの比率」であろう。

 この値の動きを把握するため、1949年から12年の期間について、「日経平均(終値、円)の対数」と「名目GDP(兆円)の対数」を描いたものが、以下の図表である。

株式市場でリスク化する日銀…国内投資信託の6割、上場企業株式の平均5%を保有の画像2

 また、図表中の点線は「日経平均(終値、円)÷名目GDP(兆円)」を表し、高度成長期やバブル期は大きく乖離するものの、この期間の平均値は約38である。やや粗い試算だが、この38という値が妥当であれば、名目GDPが500兆円の場合、日経平均は約1万9000円(=38×500)が平均的な値であると考えられる。

株式市場の官製市場化

 ところで、現在の株価の動向で留意するべき点もある。それは、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)や日本銀行による「公的マネー」が保有する日本株割合の急上昇である。

 まずGPIFは、年金積立金(約130兆円)の運用に当たって、14年から国内株式運用の割合を約15%から25%に変更している。また、日銀もデフレ脱却し2%の物価目標を達成するため、16年7月29日の金融政策決定会合で、それまで年間3.3兆円のペースで買い入れてきたETF(上場投資信託)の購入額を6兆円に増やすことを決定している。

 16年9月10日現在、日銀はそのバランスシート上に約9兆円のETFを保有しており、日銀が買い入れ対象とするETFの市場規模は8月末時点で約15兆円のため、その約6割を保有していることを意味する。

小黒一正/法政大学教授

小黒一正/法政大学教授

法政大学経済学部教授。1974年生まれ。


京都大学理学部卒業、一橋大学大学院経済学研究科博士課程修了(経済学博士)。


1997年 大蔵省(現財務省)入省後、大臣官房文書課法令審査官補、関税局監視課総括補佐、財務省財務総合政策研究所主任研究官、一橋大学経済研究所准教授などを経て、2015年4月から現職。財務省財務総合政策研究所上席客員研究員、経済産業研究所コンサルティングフェロー。会計検査院特別調査職。日本財政学会理事、鹿島平和研究所理事、新時代戦略研究所理事、キャノングローバル戦略研究所主任研究員。専門は公共経済学。


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Twitter:@DeficitGamble

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