アメリカの次期大統領がトランプ氏に決定し、強力な経済対策を打つという思惑や、アメリカのFRB(連邦準備制度理事会)も今年(2016年)12月に利上げを行う観測があることから、アメリカの長期金利上昇(すなわち日米間の金利差拡大)を予想し、市場では急速な円安が進行している。その結果、日経平均株価も上昇している。
年末も近づいてきたので、17年の株価予想も多くのメディアで出てくると思われるが、株価の適正水準はいくらか。正確な予想は誰もできないはずだが、ひとつの目安になるのは「株価とGDPの比率」であろう。
この値の動きを把握するため、1949年から12年の期間について、「日経平均(終値、円)の対数」と「名目GDP(兆円)の対数」を描いたものが、以下の図表である。
また、図表中の点線は「日経平均(終値、円)÷名目GDP(兆円)」を表し、高度成長期やバブル期は大きく乖離するものの、この期間の平均値は約38である。やや粗い試算だが、この38という値が妥当であれば、名目GDPが500兆円の場合、日経平均は約1万9000円(=38×500)が平均的な値であると考えられる。
株式市場の官製市場化
ところで、現在の株価の動向で留意するべき点もある。それは、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)や日本銀行による「公的マネー」が保有する日本株割合の急上昇である。
まずGPIFは、年金積立金(約130兆円)の運用に当たって、14年から国内株式運用の割合を約15%から25%に変更している。また、日銀もデフレ脱却し2%の物価目標を達成するため、16年7月29日の金融政策決定会合で、それまで年間3.3兆円のペースで買い入れてきたETF(上場投資信託)の購入額を6兆円に増やすことを決定している。
16年9月10日現在、日銀はそのバランスシート上に約9兆円のETFを保有しており、日銀が買い入れ対象とするETFの市場規模は8月末時点で約15兆円のため、その約6割を保有していることを意味する。