従って、17年はマクロの経済財政政策の司令塔である経済財政諮問会議とミクロの成長戦略の司令塔である未来投資会議が車の両輪となり、企業の内部留保改革が強力に推進されることが期待される。
他方、もうひとつの構造改革を議論する政府会議となる「規制改革会議」も「規制改革推進会議」に衣替えされた。こちらの会議では、大胆な労働市場改革や規制改革の提案が期待されている。外国人投資家を中心にマーケットでは、労働市場改革や社会保障制度改革等の遅れを指摘する向きも多い。従って、安倍内閣の支持率が依然高いことからすれば、17年度はアベノミクスの第三の矢である構造改革の加速に期待したい。
3.第4次産業革命
そして、安倍政権が「新3本の矢」の第一に掲げる名目GDP600兆円の実現に向けては、この未来投資会議から6月頃に公表予定の「日本再興戦略2017」が成長戦略のロードマップとなろう。
「日本再興戦略2016」を振り返れば、最大の柱は「官民戦略プロジェクト10」と称する600兆円実現に向けて成長戦略の目玉となる10のプロジェクトを例示した点にある。なかでも力点が置かれたのが、「新たな有望成長市場の創出」として例示された5項目であり、特に再興戦略のすべての論点と連動している最重要ポイントを「第4次産業革命の実現」に置いている。従って、「日本再興戦略2017」でも第4次産業革命が成長戦略第二ステージの柱となろう。
具体的には、以下が期待される。
(1)データ利活用プロジェクト推進・中堅中小企業への導入支援
個別化健康サービス・介護ロボット活用、サプライチェーン全体の在庫ゼロ・即時オーダーメード生産、スマート工場、自動走行、フィンテック、ドローン、企業・組織の枠を超えたデータ活用、シェアリングエコノミー・サイバーセキュリティ、中堅中小企業向け小型汎用ロボの導入コスト2割減・中小企業1万社をIT化支援等
(2)イノベーションの創出
企業から大学・研発法人への投資3倍増、世界的研究拠点5か所創設等
(3)チャレンジ精神に溢れる人材創出
プログラミング教育の必須化、IT活用による習熟度別学習、日本版高度人材グリーンカードの創設等
なお、イノベーション創出とチャレンジ精神に溢れる人材の創出は、ニッポン一億総活躍プランとの協調が意識されることになるだろう。
(文=永濱利廣/第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト)