企業体力が残る、今のうちに上場を廃止することで、これまで配当など株主還元に充てていた資金を成長投資に振り分ける方針に転換した。田代氏は「老朽化した設備を更新し、女性など新たな顧客を呼び込みたい」と述べている。
だが、こうした公式発表を額面通り受け取るゴルフ場関係者はほとんどいないといわれている。かつて一世を風靡した、M&AコンサルティングやMACアセットマネジメントを中核とした投資ファンド、通称「村上ファンド」と縁を切るための“手切れ金”というのが大方の受け止め方だ。旧村上ファンド側から見れば、投下した資金の“出口戦略”となる。
アコーディアの筆頭株主は、「物言う株主」として一躍脚光を浴びた村上世彰氏と関係が深い投資ファンドのレノ(保有比率9.93%)、村上氏長女の野村絢氏(同9.87%)、オフィスサポート(同2.98%)で、合計22.78%を持っている。レノなどはMBKのTOBに応募することで合意している。アコーディアは、これでやっと旧村上ファンドのくびきから解き放されることになる。
アコーディアとPGMの攻防戦
13年1月、旧村上ファンドがアコーディアの大株主として登場した。ライバルのPGMホールディングスがアコーディアに敵対的TOBを仕掛けていた渦中のことだ。
アコーディアがゴルフ場運営を始めたのは03年。経営破綻したゴルフ場最大手、日東興業などが保有するコースを米投資銀行のゴールドマン・サックスが買収。そのコースの運営会社としてアコーディアを立ち上げ、06年11月に東証1部へ上場を果たした。
ゴールドマンは11年1月、保有するアコーディア株式をすべて放出。これを機にPGMが敵対的買収に乗り出し、PGMとアコーディアは壮絶な死闘を繰り広げた。
PGMは12年11月、アコーディアに敵対的TOBを開始。これを絶好のチャンスと判断した旧村上ファンドのレノが参戦した。13年1月、レノが関連企業と共にアコーディア株の20%超を取得してキャスティングボートを握った。
レノはアコーディアに「自分たちの要求をのまなければ、PGMのTOBに応じる」と揺さぶりをかけた。アコーディアが「自社株買いを実施する」というレノの要求をのんだため、レノはTOBに応じず、PGMの狙いは失敗に終わった。
だが、レノはさらに追撃した。アコーディア株式を買い増して14年8月までに保有比率を34.62%まで高めた。