大塚家具:大塚久美子社長
大塚家具が積極的な営業攻勢をかけている。首都圏では16年12月に入り、同社の折込チラシが多くの家庭に配布され、話題となった。A3サイズ相当で見開き計4ページのそのチラシの冒頭には「大クリアランスセール」「50%オフ」の大文字が踊る。もっとも、それぞれの前には「店頭掲示品」と「最大」という文字が小さくかぶってはいるけれど。
チラシを見開くと、中の2ページには家具の写真とともに「●%オフ」という表示が。数字は50%オフがもっとも多く、下は25%オフが少数ある。中には「10000円均一」という商品も紹介されている。印象は町のスーパーの叩き売りと同じだ。
12月が会計年度末となる大塚家具が当月の売上に追い込みを掛けているのには、もちろん事情がある。15年12月期の同社の年商は580億円だったが、16年12月期の予想では483億2700円と前年から100億円も減る。これは割合とすると16.7%減であるが、この減衰率の保持さえ危惧されているのだ。
16年1-9月の売上高は前年同期比18%減だったが、10月は対前年同月比8.4%減で踏みとどまったかに見えた。ところが、11月の全店売上高はなんと同41.5%減となってしまったのである。
ちなみに16年12月期は最終赤字43億5,800万円という大幅減益が予想されている(前期は3億6000万円の黒字)。しかも、これらの当期末予想は8月に下方修正発表されたものであり、さらなる悪化での着地となると市場への信頼を揺るがせかねない。16年12月期の年商予測の下割れはなんとしても避けたい、そんな大塚久美子社長の叱咤激励が聞こえてくるような12月チラシなのだ。
大塚社長はしかし、「残念大賞」を受賞しなかった。一つは、今期がどれだけ赤字でも株主配当は一株当たり80円を公約していて、それは現在の株価に対して約6.3%の利回りに該当する。すべての上場株式の中で一番の配当利回りなのである。
ところが大塚家具の筆頭株主はききょう企画で(129万株保有)、ききょう企画の代表取締役は大塚社長だ。わかりやすくいえば、大塚社長側に約1億320万円の配当が転がり込むことになる。赤字会社の転がし方としては「見事」ということになる。
さらに大塚社長の巧みなことは、この赤字会社の配当原資をどう用意しようか、というところで妙手を打とうとしている。埼玉県春日部市で同社が所有する約5000坪の空き地を不動産投資ファンドに年内中に売却すると報じられた(12月12日付ダイヤモンド・オンライン記事『大塚家具が業績悪化で窮地、久美子体制2つの過ち』)。同記事によると、売却予定額は約20億円超で、10~12億円の売却益が得られる予定だという。
この土地は、久美子社長が15年の株主総会で追放した大塚勝久前会長が購入決定していたものだ。父親というのはありがたいもので、そこにいなくても足の脛をかじらせてくれるものだ。
「残念大賞」を出光昭介氏に
番外だが、「16年 資本家残念大賞」を出光昭介氏に贈りたい。出光興産と昭和シェル石油の合併に異を唱え、面談さえ頑なに拒んでいる様子は、いかなるものか。かつて自らが率いた出光は「従業員一人当たり営業利益が少ない会社」(16年7月12日付東洋経済オンライン記事より)でワースト99位の213万円損、昭和シェルは同じく93位、256万円も損を出している。
みんな苦しんでいるのだ。出光の伝統、「和らぎの精神」はどこへいったのか。
(文=山田修/ビジネス評論家、経営コンサルタント)
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