西友がどのようなシステムのセルフレジを導入しているのかは不明だが、一般的にスーパーのセルフレジは、店内で使用するかごを置く場所とレジ袋の場所に重量センサーがあり、その重さが会計後に変わっていたらアラートが鳴るという万引き防止システムになっている。
しかし、西友でセルフレジを体験して感じたのは、バーコードの通し忘れや打ち間違いなどが起こる確率が高いということだ。食品スーパーには機械が苦手な中高年の客も多いだけに、身に覚えのないトラブルに巻き込まれてしまう危険性もゼロではないだろう。
商品をたたむのが面倒なジーユーのセルフレジ
打ち間違いなどを防いで客側の負担をより軽減してくれるのが、ICタグによる一括会計を実現したセルフレジだ。これは、すでにファーストリテイリングが展開するジーユーに導入されている。
ジーユーのセルフレジは、商品を入れた買い物かごごと下部にあるボックスに入れ、ボタンを押せば商品が何着だろうと瞬時に会計してくれるという、一見すぐれもの。実際に店舗を訪れて試してみると、クレジットカードもサインレスで使えるため、会計はかなりスピーディだ。
しかし、問題は会計後。ジーユーのセルフレジでは、買い物かごから商品を取り出し、きれいにたたんで買い物袋に入れる作業を自分でやらなければならない。ほかのアパレル店では、複数の商品を店員がきれいに折りたたんで袋に入れてくれるが、それをすべて客自身が行う必要があるのだ。
案の定、これは衣類をたたむことに慣れていない人にとっては意外と手間のかかる作業で、やっているうちに「有人レジで会計すればよかった」という後悔が頭をよぎった。
セルフレジについて「ジーユーカスタマーセンター」に聞くと、こちらも導入の目的はコストカットではなく「レジ精算時間の短縮と利便性の向上」と話す。
「『使い方がわからない』という声はありますが、おおむね好評をいただいております。万引きなどについては、専門の人員を配置してセルフレジを監視しているので問題ないです」(ジーユーカスタマーセンターの担当者)
こうして見ていくと、セルフレジは会計を早く済ませたい人にとっては有効なシステムだが、そのためには客側のスキルも向上させる必要があることがわかる。それなら、多少時間がかかっても、きちんと商品を包んでくれて予想外のトラブルに見舞われることもない、従来型の有人レジを選ぶ客のほうが多いのも仕方のないことなのかもしれない。
もっとも、ネット通販大手のアマゾンが、入店時に個人認証を行い、商品はそのまま持ち帰ってネット決済するレジレスのリアル店舗「Amazon Go」をアメリカ・シアトルでオープンさせるように、万引きなどのトラブルを防ぐシステムはどんどん進化している。
セルフレジというシステムは、まさに今が過渡期だ。これから、さらに進化していくのか、それとも日本にはそぐわないサービスとして衰退するのか、どちらの可能性もあるといえるだろう。
(文=ソマリキヨシロウ/清談社)