受注額について東芝は明らかにしていないが、「一般的には原発一基で5000億円程度といわれていますから、2兆円ぐらいになるのではないでしょうか」(業界筋)という。
東芝にとってもグループでの受注を大幅に伸ばす夢のような工事だった。東芝はWHがS&Wを買収した後に、原発工事の建設などでも定評のある米国の大手設計・建設・調達企業のフルアーと提携して原発の建設を進めていくこととなった。ところがフルアーが工事の見積もりを取り直すと、工事費用が大幅に上昇していることが発覚した。
実は工事の着工は11年から着工し、16年から19年にかけて完成する予定だった。ところが11年3月11日の東日本大震災をきっかけに、米国では原子力発電所の安全基準の見直しが起こり、工事が中断。米原子力規制委員会(NRC)の認可なども再び取り直さなければならなくなり、工事が着工したのは13年に入ってから。
完成は、ジョージア州の2基のうち1基は19年6月、もう1基は20年6月、サウスカロライナ州は19年8月と20年8月に延びてしまった。
債務超過の懸念
日本ならば、受注後に建設費用などが上昇した場合、施工主(建設会社)から設計変更を申し出れば、その分の費用を発注元へ請求することができる。ところが米国ではいったん受注してしまえば、増加分は施工主が負担しなければならない。受注額が安すぎれば、資材上昇などのコスト上昇部分は施工主側が負担しなければならない。
それだけなら東芝がS&Wを切り捨てれば済む話なのだが、東芝グループがこの工事で発生する債務を保証していた。
そのため東芝は買収による損失額を当初、のれん代の8700万ドル(約105億円)と想定していたが、15年12月にそれが数十億ドル(数千億円)規模になる可能性を示唆した。
そして東芝がその損失部分を連結決算上に反映させなければならなくなったというわけだが、問題なのはその金額。
「どうやらフルアーは7000億円程度と見積もり、WHは5000億円程度を計上しようとしている。当初は3000億円程度計上するというのが東芝の監査法人の方針だったようですが、いくら計上するのか今、東芝の内部と監査法人で議論されているのです」(金融関係者)