トランプ米国、日本を叩き潰す二国間貿易交渉幕開け…TPP離脱、日本に不都合な真実
後者の指令は、米通商代表部に対して、今後の貿易交渉は2国間の貿易交渉、すなわちFTA(自由貿易協定)交渉に取り組むことを指令したのである。問題は、この指令が日本との貿易交渉にも適用されるということである。現時点では日本政府は、日米間の貿易はTPPが適用されるとしているが、日本にとってはTPP交渉を上回る厳しい交渉になることは必至である。
アベノミクスへの影響
さて、TPPの発効が不可能になり、アベノミクスはどうなるのだろうか。
アベノミクスは2020年の名目GDPを600兆円に引き上げる成長戦略であるが、その柱に「海外の成長市場の取り込み」が位置付けられており、そのなかで「本年2月に署名されたTPPは、世界のGDPの約4割を占めるアジア・太平洋の8億人の巨大市場の成長を取り込む大きなチャンスをもたらす」と明記している。
さらに「TPPを契機にした中堅・中小企業の海外展開支援」で、13年度に13.8兆円のGDPを20年度に25.2兆円にするとしている。また、「インフラシステム輸出の拡大」で14年の同19兆円を20年に30兆円に、「対内直接投資誘致の強化」で15年の同24.4兆円を20年に35兆円にするとしている。
結局、TPPの発効が不可能になったことにより、TPPによって想定していた33兆円のGDP増は吹き飛ぶことになる。TPP破綻は、アベノミクスの全面見直しにつながることは必至であり、それを認めたくないだけに、安倍首相はTPPに固執しているのである。
(文=小倉正行/フリーライター)