また、こうした施策を採用における自社のアピールに活用する企業もある。就職サイトを覗くと、自社の働き方改革について説明する企業が増えている。労働時間の関連では「21時消灯(今後はさらに早めていく)」「ノー残業デイの実施」「19時退社を奨励」「長時間労働の削減を評価項目に設定」といったアピールをしている企業も結構ある。
しかし、ほとんどが終業時間後の残業に関する記述が多く、具体的にどのようにして残業を減らしているのか、業務改革などの取り組みの中身について詳しく記述している企業は少ない。業務プロセスの改革なしに単純にノー残業デイや消灯時間を早めても、“持ち帰り残業”が増えるだけである。
早出残業という盲点
そして最大の問題は、誰もが終業後の残業に目を向けがちであるが、始業時間より早く出勤し仕事をする「早出残業」には目を向けようとしないことだ。いうまでもなく法律では法定労働時間の8時間を超えれば、終業後に残業しようが、朝早く仕事をしようが、1分でも超えれば残業代を支払う必要があるのだ(ただし1カ月合計の残業時間が30分未満なら支払う必要はない)。
実際に早出残業が増えている。ネット関連企業の人事部長は語る。
「始業1時間前の8時にはほとんどの社員が出社している。うちだけではなく、どこの会社でも社員の出社時間が早くなっているようだ」
なぜだろうか。もちろん、通勤ラッシュを避けたいという人もいれば、朝早く会社に出てきて仕事の段取りや準備を早めにやりたいという真面目な社員もいるだろう。しかし、なかには前日終わらなかった仕事を朝早くきてやっている人もいるかもしれない。精密機器メーカーの人事部長はこう推測する。
「2008年のリーマン・ショック以降、どこの会社でも残業規制が厳しくなり、ノー残業デイを設けたり、残業時間を減らすことに専念している。21時に消灯し、社員を会社から閉め出すところもあるが、無理矢理帰されるので当然、仕事が終わらない社員もいる。その結果、家に持ち帰って仕事をする社員もいれば、会社に朝早く来て昨夜の仕事をしている社員もいるはずだ」
もちろん、朝早く出社して仕事をやることは何も問題はない。しかし、現実は早出残業が放置されているのではないか。その背景には始業前に仕事をしても残業代を申告する社員がいないこと、上司もあえて申告するように告げていないこと。あるいは朝早く出社し、仕事をしても残業代がもらえることを知らない社員が多いからかもしれない。