最近、とかく目にする地方自治体が制作するPR動画。報道番組等では、メジャーな大企業がつくるテレビCMより、注目の話題として取り上げられることが多くなっているようです。
そうした秀逸な地方PR動画が脚光を浴びる一方で、市町村が制作するPR動画のほとんどが関係者だけのわずかな再生回数にとどまり、日の目を見ることなく動画共有サイト「YouTube」など動画サイトの渦の中にのみ込まれているのも事実です。
しかし、見逃してはならないのは、PR動画の制作にかけられている多額のコストは、そのすべてが国民の税金だということです。
今回は、市長・副市長・町長が“ひと肌”脱いで、「真剣な地元愛」から生まれた「最小限の投資」で効果を上げているユニークなPR動画を追ってみます。
9500円で、ここまでできる!市長熱演の手づくりPR動画
自治体のPR動画制作は、数百万円以上をかけて専門業者に依頼することがほとんどです。プロの手による映像が美しいイメージビデオなどは、本当に目を見張るものがあります。しかしながら、最後の自治体名のクレジットを「どこの市町村」に変えても成立してしまうような動画も数多く見受けられます。
確かに、このような動画は、発信する側の市民など関係者からは受けが良いものの、本来ターゲットとなる地域外の人からは「どこの動画も一緒」と見向きもされないことになるでしょう。
【長野県小諸市「小諸がアツ・イー!」篇】
さて、今回取り上げている長野県小諸市のPR動画の主演は市長です。そして、出演、撮影、編集のすべてを市職員でこなし、職員の稼働を除く経費は、衣装代だけのたった9500円です。しかも、「悪の手下」たちが着ている黒タイツ代が費用内訳のほとんどで、ホームセンターで調達したものだといいますから驚きです。
家庭用のカメラや照明、一般に市販の編集ソフトといった機材の制約があるなか、決して感動するような美しさや高度なクオリティの動画とはいえないですが、その苦労やもどかしさが、むしろ身近さや小諸への愛をひしひしと伝える結果になっています。金にものをいわせない素朴さが、微笑みを誘うものとなっているのではないでしょうか。
手づくり感満載のワクワク、楽しい、「やればできる」というPR動画は、話題性の獲得が期待でき、キャッチコピーの「小諸・イー」が記憶に残ることになるでしょう。