日産自動車は、カルロス・ゴーン氏(62)が社長と最高経営責任者(CEO)を退任して会長に専任し、現共同CEOの西川広人氏(63)が4月1日付けで社長兼CEOに就く人事を23日、発表した。ゴーン氏は、日産とルノー、三菱自動車工業の3社の会長の立場から、アライアンス(企業連合)全体の経営を推進する役割を果たす。
ゴーン氏はルノーによる日産への出資を受け、1999年に日産の最高執行責任者(COO)に就任。翌2000年には社長に就任し、17年にわたり経営トップとして辣腕を振るい、経営危機に陥っていた同社をV字回復に導いた。
今回の退任について、経済ジャーナリストの福田俊之氏はこう解説する。
「毎年のように『ゴーン氏は賞味期限切れ』だと言われながら、17年も続けてきたのだから、社長退任というのはあり得る話で、びっくりするようなことではありません。これまでゴーン氏を超えられる人がいなかったのか、育ててこなかったのか。次の社長に実力のある若い人が就任するならサプライズにもなりますが、昨年から共同CEOになっていた63歳の西川氏なので、なんだか白けてしまう話です。株式市場もあまり反応していないようです。
西川氏は安く部品を仕入れるなどして、“コストカッター”といわれていた人です。目に見える数字をつくった人をゴーン氏は評価する。しかし、西川氏は日本自動車工業会の会長に就任してから定例記者会見も2~3回しかやっていないし、そういう意味で不熱心、リーダーとしての資質としてはクエスチョンがつきます。ゴーン氏はアライアンスを全体で推進する役割を担うということで、上には常にゴーン氏がいるので、積極的にものを言うタイプではない西川氏が適任だったのかもしれません」
また、経済ジャーナリストの永井隆氏はこう分析する。
「日産に入ってからトータルで18年なので、長かったとは思います。ゴーン氏は会長として残るので、そんなには変わらないのではないか。ゴーン氏はルノーに力を入れていくと思います。日産については、ゴーン氏がゼロからイチを生み出したので、その路線を引き継いでいくことになるでしょう。日本の自動車メーカーのなかで、日産は中国市場でシェアトップですが、大気汚染のひどさに中国政府も対策に乗り出しているところで、今後、強さを持つ電気自動車(EV)で力を発揮していくのではないでしょうか。自動運転への道も、追求していくのだろうと思います」
西川氏による経営の舵取りに、しばらく注目が集まりそうだ。
(文=深笛義也/ライター)