十六銀行と中京銀行の組み合わせが実現しない場合は、愛知銀行が中京銀行のパートナーとして想定される。実際、中京銀行は引く手あまただ。愛知県で3番手の第2地銀の中京銀行は、自動車産業が集積し今後も成長が見込まれる東海地方が営業地盤だけに、中部地方に本店を置く地銀からのオファーが引きも切らない。三菱東京UFJ銀行が保有株の売却を決断し、十六銀行との合併を断念すれば、有力地銀による中京銀行の争奪戦が繰り広げられることになる可能性もある。
大人気の千葉興銀
みずほ銀行が15.4%出資する千葉興業銀行も、首都圏に足がかりを得たい地銀にとって魅力的な結婚相手といえ、垂涎の的になっている。地銀大手の千葉銀行が動くという情報がある一方、ほかの関東圏の地銀とのアライアンスに向かうとの見方もあり、見解は分かれている。
千葉銀行と武蔵野銀行は16年3月、資本・業務両面で包括提携した。「経営統合によらない新たな地銀連携のモデルを目指す」としており、提携の名称を「千葉・武蔵野アライアンス」とした。三菱東京UFJ銀行は「火曜会」「好日朝食会」という親密銀行の組織をつくっているが、「火曜会」には関東では千葉銀行、常陽銀行、足利銀行が入っている。そのうち常陽銀行と足利銀行は、めぶきフィナンシャルグループに13年12月に集約された。「好日朝食会」には武蔵野銀行が加盟しており、千葉銀行、武蔵野銀行は三菱東京UFJ銀行系と位置付けることができる。
群馬銀行が武蔵野銀行に食指を伸ばしているとの情報があったが、「千葉・武蔵野アライアンス」はこの動きを読んだものといわれている。群馬銀行は三井住友FG系と見られており、三菱東京UFJ銀行の親密行との合体には無理があるとの指摘が以前からあった。
北関東では、筑波銀行と第2地銀の栃木銀行と第2地銀の東和銀行の北関東3行は地域活性化に向けた連携協定を結んだ。だが、ただ一緒になるだけでは強い銀行にはならない。そのため、共同で商談会を開き、互いに取引先を紹介している。
経営規模で下位地銀や第2地銀を上回るビッグな信用金庫からも目を離せない。埼玉県信用金庫、城南信用金庫、岐阜信用金庫、岡崎信用金庫、京都信用金庫など、地銀・第2地銀の流動化が進んでいる地域にある有力信用金庫の動きにも関心が集まる。有力信金が弱小第2地銀を飲み込んで銀行に業態を変更することを、金融当局が認めるかどうかで情勢は大きく変わる。
地銀再編の動きは、水面下のものを含めて、一層活発になっている。だが、吸収される側の感情もあるため、経済合理性のみでは成立しないのがおもしろいところだ。
(文=編集部)