それよりも実質的には今まで支払われていなかったサービス残業分の賃金が、きちんと支給される体制の確保が重要。それが確保できれば、さらに待遇面(報酬)が改善される。日本のドライバーの平均年収は388万円、全産業の同489万円より2割も低い。しかも激務だ。
宅配のやり方を改善しても、コトは解決しない
一方、宅配サービスの業務改善としては、時間帯指定サービスを見直し、繁忙期にはアマゾンなど大口顧客の荷物の総量を抑制するなどで妥結した。
しかし、この施策では宅配サービス、特にヤマトが直面している過重な荷物の取り扱いの解決にはならない。一般的に、企業はオペレーション(仕事のやり方)の改善で得られる効果は年数%が限界。今回の改善策でも効率的にはその程度だろう。
抜本的な改善には、最大顧客であるアマゾンを返上すること。ヤマトの問題は、宅配サービス業界の一般的な問題ではない、その証拠に佐川急便もヨドバシカメラもうまくやっている。
2013年に佐川急便がアマゾンを返上したとき、当時のヤマト社長が「佐川と同じ条件でアマゾンを獲得した」と、社内で得意顔に発表して、セールスドライバーの大反発を買った。
アマゾンを返上した佐川は業績を急回復。ヤマトはアマゾンのために利益急減、社員は過酷な労働へ。「利益なき繁忙」に至っている。
私は3月8日付本連載記事『ヤマト、業績悪化&運転手パンクの元凶・アマゾンと取引中止すべき』でも指摘したが、ヤマトで起こっているのは根本的なキャパシティ(取り扱い限界)の問題だ。そして、それは宅配方法を改善したり、消費者向けを含む全体的な価格値上げなどで改善できる規模ではない。
ヤマトにとっての最大顧客であるアマゾン対策によって事態は解決できるし、引き受けている配達個数年間3億個といわれるアマゾンからの依頼荷物の取り扱い方針いかんなのだ。
いずれアマゾン・デリバリーが始まる
同記事で「取り扱い単価約250円といわれるアマゾン荷物を500円に値上げすればコトは解決する(ヤマトの取り扱い平均単価は570円程度ともいわれる)」と、指摘した。電通の社長辞任という事態を見聞したヤマト経営陣が、取り扱い返上を覚悟で交渉すれば、他に容易に引き受け手がないだろう、宅配最大手顧客のアマゾンはそれを飲まざるを得ない。ヤマトホールディングスの山内雅喜社長も「分かりやすく言うと、取引がなくなるという形もあるだろうと考えている」(3月23日朝日新聞)と、腹をくくったようだ。