どれだけの値上げで落ち着くかは今後の両社の交渉による。しかし、いずれにせよアマゾンにとっては、それは煮え湯を飲まされるような体験となる。すなわち、最大のネット通販会社であるアマゾンにとって、物流コストはコストとして最大のものであろうし、何よりそれをサービサー(サービス提供会社)によって規定されるということになれば、利益確定における経営の大きな意思決定を外部に握られてしまっている、ということだ。
私は、いずれアマゾン・デリバリーが始まると断言する。戦略構造的には平仄が合う話である。
まず、アマゾンのビジネス規模だ。現在で年間3億個という宅配便の個数が発生している。アマゾンやネット産業の成長を考えれば、それはいずれ年間5億個を達成するだろう。
現在宅配便最大手であるヤマトは、年間取り扱い個数12億個といわれる。ヤマトはアマゾンが離れれば年間9億個となる。アマゾンがヤマトを離れて自分で物流を始めれば、いきなりヤマトの半分の規模の巨大物流会社が誕生する。
次にアマゾンという会社の革新性だ。そもそも書籍のネット通販を世界で初めて開始して、今の巨大ビジネスに至っている。多くの日本人には知られていなかったドローンで宅配を始める、その実際の実験映像を見て度肝を抜かれたのは数年前のことだが、今ではアメリカで実用化の段階に入っている。
実際、本稿を記している3月22日付日本経済新聞夕刊で「アマゾン、本を直接集配」という報道がなされた。私からしたら、「やっぱり!」ということだった。
アマゾンは自ら集荷車を仕立てて、出版社から本を集配して自社の巨大倉庫に搬入するという。それも今秋には開始する。アマゾンの巨大倉庫といえば、商品をピックアップするロボットが作業者のところまで商品を棚ごと持ってきてくれるという先鋭さだ。
インバウンドで本を集配する仕組みを発足させるのなら、アウトバウンドで荷物を出す-自ら宅配まで終了する、というところまではすぐに絵図が描けるだろう。アマゾンほどの巨大企業なら、中堅の物流会社をM&A(合併・買収)して始めることも可能だろうが、きっと驚くべく革新的なサービス・モデルを引っさげて始めると思うので、自社展開をする可能性が大きいと私は見る。
今、起きていないからといって荒唐無稽な話だと思わないでほしい。ヨドバシカメラはe通販部門の売り上げが年商1000億円を超えようとしているが、すべて自社配送である。
(文=山田修/ビジネス評論家、経営コンサルタント)
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