ユニクロのお手頃な価格設定は、商品クオリティーの維持と両立させることが大前提になっているようだ。このコメントからは、値下げが品質の低下を招いているわけではないと受け取れるが、専門家はユニクロの現状をどう捉えているのか。
繊維業界新聞の記者や、量販店のアパレル広報などを経験している南充浩氏はこう語る。
「私自身は、最近のユニクロ商品の品質が大きく劣化しているという印象は持っていません。むしろ値上げしていた頃のほうが素材の質が悪く、値下げ後の最近の商品のほうが、質が戻っているという印象さえあります。例えばスウェットだと、かつては綿100%で販売されていたのに、値上げしていた時期は綿の割合を下げてポリエステルを混ぜていたという具合です。当時、店頭で商品を見ていて、原材料費の高騰がものすごく反映されていると感じていました。
ポリエステルやナイロンといった合成繊維は石油が原料なので、あまり値動きが激しくありません。石油さえ手に入れば、いくらでも増産できます。反対に、綿や羊毛の原料は農作物や動物であるため、その年によって取れる・取れないのムラがありますし、増産もしにくい。ですから14~15年頃は、ユニクロに限らず多くのブランドで『綿の使用量が減っているな』『羊毛の代わりにポリエステルやアクリルの割合を増やしているな』と感じていました」
では昨今、値下げをしたにもかかわらず質を再び向上させることができているのも、そういった事情からなのだろうか。
「商品の値下げがあった場合、そのために素材のクオリティーを落としている可能性がまったくないとはいいません。ですが現在のユニクロは、以前よりも良い素材を使っていると私は考えています。再び綿100%に戻ったスウェットもありますし、セーター類だと羊毛100%の商品も多いですから。
モノによってはもちろん合成繊維を使っていますが、それはコストを下げるのが目的というより、『生地づくりにおいて必要だから混ぜる』というスタンスが主になっているように感じます。かつて高騰していた綿花の価格相場も今は元の状態に戻っており、そういった原材料費の変動を、ユニクロも当然見ているわけですね。それで『品質を落とさなくても商品を値下げできる状況がある程度整った』と判断し、値下げを実行したということでしょう」(南氏)